所長の挨拶
慶應義塾大学産業研究所へようこそ。所長の清田耕造です。
産業研究所は産研(サンケン)と呼ばれています。1959年(昭和34年)9月に、慶應義塾創立100周年の記念事業の一環として大学附置研究所として設立されました。産研の設立当初の英語名はThe Institute of Management and Labor Studiesであり、設立当初の主な研究対象は労使関係でした。その後、時代・社会の変化に伴い、研究対象を経済・法律・行動科学へと拡大していくと共に、1975年にKeio Economic Observatoryと英語名を変更します。
このObservatoryは日本語で「観測所」や「天文台」を意味するため、社会科学の研究所の名称としてはやや特異に聞こえるかもしれません。しかし、世界的に見れば必ずしもそうではありません。例えば、フランスにも、Observatoire Français des Conjonctures Economiques (OFCE: フランス経済情勢観測所)と呼ばれる優れた研究機関があります。産研は、英語名のObservatoryという名前が示すように、経済学や法学、経営学という社会科学のレンズを通して、現実社会や産業の問題を観測する、という研究スタイルを大切にしています。
また、国内外の統計を駆使した科学的な実証研究を重視する傾向も、産研の一貫した研究スタイルかもしれません。このような研究スタイルは、今でこそ特徴的ではなくなってきていますが、例えば日本の経済学で実証研究が重視されるようになったのは、ここ30年ほどのことです。
このように、産研の研究対象は時代を通じて変化しつつも、研究スタイルは時代の流れに左右されないものであり、その根底には、慶應義塾の「実学」の精神、すなわち「実証的に真理を解明し、問題を解決していく科学的な姿勢」があります。このような産研の研究スタイルと慶應義塾の精神を大切にしながらも、新しいことに挑戦し、また、塾内外と教育研究における連携を深めることで、社会の発展に寄与していきたいと考えています。産研の活動に対する引き続きのご支援、ご協力をお願い申し上げます。
2025年10月1日
