■■多摩大学[企業経営法務II(知的財産権法)]・講義メモ■■

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■V 出願手続(I)■

(多摩大学・非常勤講師:石岡 克俊)

■ 講義

1.特許をとるには出願が必要

特許をとらなかった著名な発明の例:

フレミングのペニシリン

スタンリーのインフルエンザ・ワクチン

ファラデーの発電機・電動機

2.特許庁への出願

出願には所定の出願書類を作成し特許庁(100-8915東京都千代田区霞ヶ関3-4-3)へ提出する

発信主義の採用

電子出願のスタート(平成2年12月1日)

権利の発生(著作権の場合):無方式主義(出願手続・登録などを必要としない)

出願すべきか、ノウハウ(技術秘訣)としておくべきか:コカ・コーラの例

(i)先使用権が立証可能か:立証が可能な場合は、ノウハウにしておいても安全。なお、立証の方法としては証拠なりそうな書類を予め公証人役場に持参し確定日付をもらっておく必要がある。

(ii)特許性の強弱:特許性が弱いと、出願公開により発明が強制的に公開されるにもかかわらず特許権をとれる可能性は少なく、合法的模倣を誘発することになる。

(iii)侵害の摘発が困難か容易か

(iv)他社の追随が困難か容易か:他社が容易に追いつけるものであるなら、ノウハウとして秘匿する意味はない。たとえば、リバースエンジニアリング(他人の製品を解析して追いつく技術)がある。

* 発明を実施するとただちに製品からそれがわかるような場合であって、特許性のある発明であるなら出願に躊躇するべきではない。

3.他人よりも先に出願しなければならない

先願主義:先に出願した者に特許する

先発明主義:米国では、先に出願した者が一応先に発明したと推定されますが、あとから出願した者が先に発明したことを立証すれば、後願者に特許が付与される。

抵触審査手続(インターフェアレンス):出願人同士、特許権者同士または両者間でどちらが先に発明したかを審査する手続

4.願書と明細書の提出

特許をとろうとする者は、願書に明細書及び要約書を添付して(必要なときは図面も添付して)特許庁長官宛てに提出しなければならない。

書類の作成要領はこちら(=>特許庁ホームページ[よくある質問]参照)

明細書の書き方(法36条3項):

(i)発明の名称

(ii)図面の簡単な説明(図面を添付した場合にのみ)

(iii)発明の詳細な説明(技術の公開という特許制度の要請に沿う技術説明書としての役割と、権利の幅を定めるクレームをサポートし、説明する役割)

(iv)特許権の範囲

5.明細書作成のポイント

発明の所在を把握する(発明―課題+解決)

請求項(クレーム)の選択(クレームの役割:特許の技術的範囲の確定(法70条)、クレームに記載された発明に基づき特許性の審査の対象となる)

多項制の採用(法36条5項)

クレームの類型

(i)作用、機能、性質、特性による物の特定を含むクレーム(機能的クレーム)

(ii)製法によって特定された生産物のクレーム

(iii)用途を一般的に表現したクレーム

(iv)用途、性質による特定のない組成物のクレーム

クレームのカテゴリー(表現形式)の決定(法2条3項):権利の範囲に影響を及ぼす

(i)物の発明:その物の生産、使用、譲渡、貸与、譲渡・貸与の申出、展示、輸入に権利が及ぶ

(ii)方法の発明(単純方法):その方法を使用する行為にのみ権利が及ぶ

(iii)物を生産する方法の発明(製造方法):その方法の使用だけでなく、できた物の使用、譲渡、貸与、譲渡・貸与の申出、展示、輸入に権利が及ぶ


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