■■多摩大学[企業経営法務II(知的財産権法)]・講義メモ■■

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■IV 特許要件論(II)―産業上利用可能性、新規性■

(多摩大学・非常勤講師:石岡 克俊)

■ 講義

1.産業上利用可能性

産業上利用可能性の意義:学術的・実験的に利用される発明の排除

遺伝子特許に対する態度

(i)ESTs(Expressed Sequence Tags)[遺伝子断片]の特許出願とその拒絶(1991年):米国特許商標庁は有用性無しと判断

(ii)キナーゼ(リン酸化酵素)のESTsに特許付与:米国特許商標庁に有用性解釈の変更

(iii)日本・ヨーロッパの特許庁はESTsの特許性に消極的

(iv)クリントン・ブレア声明(2000年3月14日):ヒトゲノムの解読情報の公開と自由利用

(v)3極特許庁専門家会合:核酸分子関連発明は、機能または特定の実質的で信頼性のある有用性の開示がなされていない場合は、産業上利用可能性、実施可能要件または記載要件をみたさない、ことが確認された。

(vi)沖縄サミット首脳宣言(2000年):われわれは、遺伝子に基づく発明について、可能な限り共通の慣行および政策に基づいた、均衡のとれた衡平な知的所有権保護が必要であることを認識する。

医療は産業か?:医療非産業説の現在(医師が行う医療行為に特許を持ち込むことが妥当かという問題)

特許庁「産業上利用することができる発明」の運用指針(「産業上利用することができる発明」に該当しない例)

(1)人間を手術、治療または診断する方法

(2)その発明が業として利用できない発明(例:喫煙方法のような個人的にのみ利用される発明)

(3)実際上、明らかに実施できない発明

2.新規性

新規性の意義:特許出願時(出願時基準主義)に客観的な新しさを持っていること

新規性を失う3つの場合

(1)公知(その発明が日本国内または外国で公然知られた場合)

(2)公用(その発明が日本国内または外国で公然実施された場合)

(3)文献公知・インターネット公知(その発明が日本国内または外国で頒布された刊行物に記載された場合または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった場合)

公知:人を媒体として不特定人により現実に知られている場合

公用:設備、装置などを媒体として不特定人に知られうる状態で実施された場合

文献公知(刊行物記載):

インターネット公知:平成11年特許法改正

媒体 状態 地域の限定 根拠条文
公知 知られている なし 特許法29条1項1号
公用 設備・装置など 知られうる なし 特許法29条1項2号
文献・インターネット公知 刊行物・インターネット 見られうる なし 特許法29条1項3号

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