■■多摩大学[企業経営法務II(知的財産権法)]・講義メモ■■

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■IV 特許要件論(I)―発明であること■

(多摩大学・非常勤講師:石岡 克俊)

■ 講義

1.「自然法則を利用した技術的思想の創作」(特許法2条)

「自然法則の利用」とはどういうことか

ヘンリー・フォードの標準化とコンベア・システム(大量生産方式)は発明か

暗号の作成方法、記憶方法、商品の陳列・販売方法、広告方法、計算方法は発明か

2.人為的取極めの非発明性―コンピュータ・プログラムをどう扱うか

コンピュータ・プログラム(非発明):人為的な取極め

コンピュータ制御による鉄の圧延方法(発明):コンピュータ制御の方法は人為的取極めだが、鉄の特質を利用している面を捉え「自然法則の利用」を認める

詰め将棋の解法を導くソフトはどうか

3.特許庁の審査基準の改訂(平成9年)=>コンピュータを制御するソフトウェアを特許法の保護対象に

課題解決手段が、

(i)ハードウェア資源に対する制御または制御に伴う処理、

(ii)対象の物理的性質または技術的性質に基づく情報処理、

(iii)ハードウェア資源を用いた処理、

のいずれかに該当すれば「自然法則を利用した手段」だとする。

* コンピュータを用いて処理することのみである場合は発明とは認めない

* コンピュータのハードウェアをどのように用いるかを示す必要

* フロッピーディスク、CD-ROMなどの記憶媒体の特許を認めることにした(「情報の単なる提示」は「技術的思想」とはいえない?)

米国特許商標局・連邦最高裁:コンピュータプログラムに発明性を認めるのに消極的

ディーア事件[ゴムの加硫成型工程制御プログラム]連邦最高裁判決(1981年3月3日):自然法則、自然現象、抽象的アイディアの3つのカテゴリーのみが特許の対象から除外されると判示し、数学的アルゴリズムは単なる抽象的アイディアで特許の対象ではないが、本件の場合は数学上の計算手段ではないから特許の対象となるとした。

4.「技術的思想」であること―反復可能性の必要

「技術的思想」=>反復可能性・実施可能性

植物新品種それ自体・新品種の育成方法=>「技術的思想」といえるか?

植物特許の可能性:同一の育種(創製)手段を繰り返して同一結果を再現できれば(確率は低くても良い)発明性を認めるという審査基準を公表(昭和50年11月)

最高裁の「技術的思想」をめぐる判断(平成12年2月29日[黄桃育種法特許]):その特性にかんがみ、科学的にその植物を再現することが当業者において可能であれば足り、その確率が高いことを要しない。

種苗法による植物新品種の保護:新品種が登録要件をみたせば品種登録し、登録者に無断で種苗を業として有償譲渡することなどを禁止する法律。特許法のように創製過程の再現性に着目せず、出来上がった特性が固定しているかどうかを問題にする(りんごの「むつ」・「ふじ」はこの法律によって保護される)。

バイオ技術の発達と特許法・種苗法の関わり

5.「発明」と「発見」の違い

「発見」は技術思想にはならない。

6.「完成」と「未完成」

「非発明」と「未完成発明」

「未完成発明」の特異な事例:原子炉事件


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