デフレ不況と呼ばれる昨今、吉野家の牛丼は安くなるし、マクドナルドは半額に。コンビニのパンは100円というのが一つの基準になっています。正直いうと、もう少し早くやってほしかった。独身時代は、外食がほとんどだったから。物価の下落が企業収益を圧迫しているといわれる中、こんなことをいうのは不謹慎かもしれません。しかし、これが消費者の偽らざる本音というところでしょう。
かつての勢いはなくなったものの、ユニクロは低価格衣料品の代表格です。パソコンも一昔前(といっても数年前)では考えられないくらいの値段で売られています。こうして見てみると、安くなっているのは「モノばかり也」という気がしないでもありません。
最近、友人と雑談したとき、彼はこう言ってのけました。「ホントに買いたいモノが出てこないんだよな」。わたしは、彼の一言を聞いて考えさせられました。低価格が話題となっている商品は、どれも新しいモノではない。むしろ、昔からの定番だ。その証拠に、牛丼やハンバーガーの味も、量も、質も、何も変わっていない。新しい商品を開発し、消費者に提案するのではなく、いわば過去の資産を「切り売り」し「安売り」しているのが、「モノづくりの現場」なのではないだろうか。
それにひきかえ、「サービス」については、ちょっと状況が違っているようにみえます。電話の通話料は、激しい競争の下、固定・携帯ともに徐々に低下しているのは明らかです。新しい料金プランや新サービスなども盛んに提案されています。航空運賃も、航空法改正に伴って導入された「バーゲン型」運賃の開始以降、正規運賃の値上げにもかかわらず、往復割引、早割(早期購入割引)、シルバー割引や介護割引にとどまらず、最近流行の期間・座席数限定型割引「空割(そらわり)」によって、実質的にかなり低価格化が進んだと考えられます。
考えてみれば、「サービス」は「モノ」に比べ、新商品を作りやすいのかもしれません。従来型のサービスに「新しい条件」を付加することにより、また新たな商品を生み出すことができるからです。そういえば、保険商品の類も、昔から「特約」というかたちで新たな条件を加え、従来の商品とは違う「新商品」を提案してきました。
値段についてはどうでしょう。時代の潮流でしょうか、どうしても低価格化の動きに目が奪われがちです。しかし、当然、逆もあり得ます。たとえば、金融機関による無料サービスの有料化が代表例です。いま、金融機関ではさまざまなサービスにおいて手数料というかたちで有料化がなされています。店舗統廃合によって待ち時間が長くなったのに、手数料なんて「泣きっ面に蜂だ」と思った人は、きっとわたしだけではないでしょう。興味深いことに、この動きは新商品の提案を伴わない価格引上げであり、どの分野にも見られない特異な傾向です。規制の緩和によるモノ・サービス関する商品・価格の自由化は、一方において低価格化を助長し、他方において思わぬ「新商品」に出くわします。これを受け入れるも受け入れないも、わたしたち自身の選択次第なのです。