先日、大川さんからこんな質問を受けました。「パソコン供養をやろうと思うの。法律的にはどんな問題があるのかしら・・・」と。わたしは、しばしあっけにとられました。
何だ何だ、その「パソコン供養」ってのは。「供養」ってお供えをして死者の冥福を祈ることでしょ。パソコンをどうするっていうの?
話を聞いてみると、そうかそうか・・・。今は低金利時代。年金生活のお年寄りにとってパソコンはいまだ高嶺(高値!?)の花(薄給のわたしにとってもパソコンは「高値」の花です・・・)。この「コンピュータおばあちゃんの会」にもパソコンに興味がありながら、お持ちでない方がたくさんおられるとのこと。そこで、ここはひとつ企業で引退したパソコンを譲ってもらおうという算段。「肩たたき」にあったパソコンに第二の人生を歩んでもらおうというパソコン冥利に尽きるこの企画。わかりました、わかりました。少しでも多くの方にパソコンを手にしてもらい、みなさんには、ぜひ情報化の荒波をスススィーっと軽やかに乗り切っていただきたいものです。
さて、この企画。確かに素敵な発想だと思います。でも、わたしたちがこれまで身近に使ってきたテレビや洗濯機などの家電製品と、パソコンとの間には、ぜんぜん違う法的状況があることを注意しなければなりません。ちょっとパソコンを使ったことがある人なら、聞いたことがあると思います。ソフト(ウェア)とハード(ウェア)という言葉。街の電気屋さんでパソコンを買うとき、この言葉があたりまえのように交わされます。実は、この二つの区別が曲者なのです。
テレビ(ハード)を買うときには、大きなスーパーや街の電気屋さんで買いますね。パソコンを買うときには、どこへ行きますか。パソコンショップや電気屋さんなどいろいろですね。でも、パソコンはパソコン本体(ハード)だけを買ってきても、きちんと動きません(すでにたくさんのソフトが入っているものは別ですけど)。そこでソフトが必要になります(テレビとは違うところです)。
テレビだったら、売っているお店やさんから買ってくれば、どのように使っても自由です。古くなって新しいのに買い換えたら、捨てるなり、知り合いに売ったり、あげるなりしてもぜんぜんかまいません。
しかし、パソコンは違います。パソコンの本体だけでしたら、テレビと同じように取り扱ってもよいのですが、ソフトが載っている場合はちょっと違います。買ったときからパソコンにソフトが載っている場合でも、みなさんがたがそれぞれの用途に応じて新しくソフトを購入し、インストールした場合でも、わたしたちはお店やさんからソフトを買ったつもりでいますが、実はそうではないのです。
パソコンのソフトには、使用許諾契約書というのがついています。見たことがありますか。わたしたちは、ソフトを購入すると、この契約を買ったお店とではなく、マイクロソフト社等のソフト制作会社と結ぶことになるのです。ソフトは、この契約書に従って使わなければなりません。中身に関しては詳しく述べる暇はありませんが、一ついえることは、パソコンを誰かから譲ってもらう場合、パソコン本体(ハード)はテレビと同じようにそれぞれ自由に取り引きしてもかまいませんが、ソフトに関してはソフト制作会社と前の持ち主とが「使用許諾契約」を結んでいるので、譲ってもらった場合には前の持ち主から買ったとしても、タダでもらったとしても、新たにソフト制作会社と使用許諾契約を結ぶ必要があるのです。簡単にいうと、パソコンを譲ってもらったときには、すでに保存されているソフト(WINDOWS95等のOSソフトも含めて)を全部消去してから、もっているソフトを入れたり、場合によっては新たにソフトを購入してはじめて利用できるようになるのです(メデタシ、メデタシ)。