下水道イコール水脈?光脈?金脈?


東京の地下で着々と進んでいる静かな動きのことをご存知だろうか?

現在、下水道の暗渠(あんきょ)を利用した光ファイバの敷設工事が進められている。実は、この動き、私たちの情報生活を変える大きなきっかけになるかもしれないのである。

東京都は、八六年から下水道の水位等の管理・監視のために人的コスト上合理的な光ファイバネットワークを利用しはじめていた。その光ファイバ網は、昨年九月現在、総敷設距離約二一四キロ。二〇〇〇年には八〇〇キロにも及ぶという。敷設当時の伝送容量は、約三二メガバイト。一秒間に何回の光が点滅したかによって情報(データ)の転送が行われる(例えば、一ギガバイト=約一億回の点滅)。しかし、この一〇年間ほどで伝送装置の技術革新によって格段に進歩した。現在では、光ファイバ一本が普通の伝送装置で一・六ギガバイト(千メガバイト=一ギガバイト)の能力を有するに至っている。電話回線ならば、一本で十四万四千回線。通常、四心一組で六組、つまり二四本の光ファイバだから、この二四倍ということになる。東京都は大変な容量のデータを転送することができるネットワークを知らないうちに手に入れてしまったのである。当然、従来の下水道の管理・監視システムのために必要な能力をはるかに越えてしまっていることはいうまでもない。

通信事業者はこの余剰容量という「地下水脈(光脈?・金脈?)」に関心を持ちはじめ、法制度もこの動きに沿うかたちで改正された。

昨年三月の電気通信事業法、六月の下水道法の改正がそれである。下水道法第二四条第三項によれば、下水道管理者は、排水施設の暗渠構造部分には、「国、地方公共団体・・・第一種電気通信事業者その他政令で定める者が設置する電線その他公共下水道の管理上著しい支障を及ぼすおそれのないものとして政令で定めるものを・・・設ける場合を除き」、「いかなる施設又は工作物その他の物件も設けさせてはならない」としている。つまり、特定の事業者に対して下水道が開放されることとなったのである。

このことにいちはやく目を付けているのは、長距離系NCCのDDI。現在、家庭用端末からローカルポイントまでの接続をNTTに委託しているため、ローカルポイント毎にNTTにアクセスチャージを支払うことになっている。しかし、下水道に敷設されている光ファイバ網を利用することができれば、DDIは地域系電話会社として業務を行うことができるようになる。

下水道法は昨年の一二月一日から施行されている。現在の問題はいかなる条件で東京都が下水道光ファイバを事業者に提供するかということである。東京都がどのような形で下水道光ファイバを開放するか、そしていかなる事業者が参入してくるか、意外なところにあった光ファイバネットワークの今後の動きを注視してゆきたい。


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