大店法の後に何が待っているのか?


最近、大型スーパーの出店がかまびすしい。ちょっとした出店ラッシュである。主な原因として、九〇年以来の一連の大規模小売店舗法(大店法)の緩和、バブル崩壊による地価の下落、そして低金利があげられるのだが、この四月から大学の教員として勤務、研究することになったわたしにとって、現在のこのような動きは一種独特の感慨を覚えるのである。

ちょうどわたしが小学生のときである。八〇年代初頭と言えば、東京都内ばかりでなく、多くの地方都市で大規模小売店の出店が相次ぎ、さまざまな問題を起こした時期であった。わたしの田舎も例外ではなく、近隣の都市を本拠とする大型店の進出が問題となっていた。前にもこのコラムでわたしの実家は文房具店を経営しているという話をしたことがあるが、わたしの父はこの大型店の出店にたいへんな懸念を示していたことを覚えている。当然、このころは「大店法」という法律もそれに付随するさまざまな「手続」の存在も知らず、もっぱら「ある小売店経営者の主張」を聞いたに過ぎなかった。しかし、現在わたしが専攻している「経済法」にはじめて接した思い出深い経験でもある。

ちょっと前のことになるが、わたしが正月に帰省したときに実感し、わたしが理解した最近の大型店の出店のひとつの特徴は、「全国規模で展開する」大型店の出店が増えているということ。つまり、地元資本ではないということ。わたしが八〇年代に体験したときは「近隣の都市を本拠とする」大型店の進出が問題となっていたのに比べ、この差異は顕著である。地元資本の大型店はそれほど元気がない。いまひとつの特徴は、影響の出る地域が広域化したこと。いまさらモータリゼーションの影響を改めて述べるまでもないし、わたしの故郷の北海道をみているからかもしれないのであるが、これまでの店舗とまったく規模が違う。わたしが見聞したのは、故郷から三〇キロメートルほど離れた滝川という街に進出したダイエーハイパーマートである。千台ほど収容できる駐車場。平屋建ての広大な店舗には、食品のみならずありとあらゆる商品が置かれている。年末にオープンしたこの店舗にすっかり地元商店街は意気消沈し、恒例の歳末・元旦大売り出しをしようにも顧客が遠のき、実施を控えたといわれる。道産子は新しもの好きなのか、そこに買い物に行くと故郷の人に何人も出会った。ちなみに、この五〇〇メートル横には、ジャスコが進出している。この街自体、人口五万人程度の規模なのにこれら二つの大型店を支える購買力があるとは思われない。近隣の市町村をあわせても、である。

この出店ラッシュは、大店法の緩和がひとつの原因であるとされている。しかし、大店法は出店を抑制する機能を有すると同時に、他方で既存店舗をスクラップすることも抑制していたことに注目するべきである。つまり、大店法の緩和は店舗のスクラップアンドビルドを促進することになる。マーケットの調査をきちんとしているのであろうが、進出企業の見込み違いで簡単にスクラップされたりするのではたまらない。九八年三月が改正大店法の二回目の見直し期限である。大店法の存続・廃止の是非ばかりではなく、この際大店法のような調整制度の必要性を都市の機能・計画という点から正当に評価し、大店法という枠組みで捉えていくことの是非を含めて議論をしてほしいものだと思う。


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