「民間の第三者機関」という存在


NTTDoCoMoの提供するi-modeサービスが、消費者向け電子商取引(B2C)の"一つの"「デファクト・スタンダード」になりそうな勢いです。i-modeの利用者は1700万人。携帯電話によるインターネット利用者の約六割を占めています。パソコンなどのインターネット接続業者(PCプロバイダ)の最大手@nifty(アット・ニフティ)が、会員430万人といいますからその数は圧倒的です。

携帯電話ネット接続事業者(携帯プロバイダ)であれ、PCプロバイダであれ、インターネット上のさまざまなサービスを利用することができる点に相違はありません(もちろん、料金の多寡云々の問題はありますが…)。しかし、携帯プロバイダであるDoCoMoが、PCプロバイダと決定的に異なっているのは、i-mode利用料と<併せて>商品などの代金決済ができるという点です。つまり、消費者と何らかの商品について取引した場合に、企業がその代金をDoCoMoを通じ徴収することができるということなのです。わたしが冒頭で「消費者向け電子商取引の…」と述べたのは、この特性を踏まえてのことです。他方、PCプロバイダを経由して、インターネット上の企業と取引することはもちろん可能です。しかし、その際の決済方法は、通常、代金引換郵便を利用したり、クレジットカード払いとなります。

さて、このようにDoCoMoに対し代金徴収委託ができるのは、それが設定する基準を超えた「公式サイト」企業のみになります。現在、このような企業(サイト)は約1300あり、これらの企業は顧客電話番号の開示を受けたり、サイトを検索するためのメニューに追加されます。その他のいわゆる「勝手(かって)サイト」にはこのようなメリットはありません。企業の立場からいうと、「公式サイト」に登録されれば自ら代金徴収の手間がはぶけ便利だし、多数のi-mode利用者を顧客に(する可能性を)持つことは大きなメリットだといえます。しかし、「公式サイト」の登録基準は不明瞭で恣意的なものであるとの不満が出ているのも事実です。

このように、一つの通信事業者が、商品などの販売をめぐる企業間競争にまで影響を及ぼしている現状があります。ここでの競争を公正に行うための方策として、「公式サイト」登録基準を公開し明示することや、その登録基準の適正な運用を担保する民間による第三者機関の設置すべきであるとする意見などがあります。確かに前者の措置は不可欠でしょうが、後者ははたしてどれくらい意味があることなのか疑問があります。一定の登録基準を明示した上で、その水準を越えている企業には半ば義務として「当然に」登録を認めるやり方の方が、新たな「規制」機関を民間に創設するよりも望ましい。民間の第三者機関といっても、それらの運用が透明なかたちで国民に開かれているためしがほとんど存在しないし、国民もこれらをこまめにチェックすることができないからです。最近、さまざまな分野で自主規制を定め、その運用機関を設置する動きが盛んですが、これらがそこここで作られるにしたがって、ますます消費者から遠のいていく感を否めません。


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