先月取り上げたADSLだけではありません。この一か月の間に、ブロードバンドを巡る情勢はまた大きく変化しました。ここ数日間で、NTTによる新たなブロードバンドサービスの開始(光ファイバーサービス)や、大手インターネット接続業者によるADSLサービスの値下げ、さらには新規低価格ADSLサービス予約受付開始の報道に触れました。また、ブロードバンドを巡る価格競争の台風の目"Yahoo!BB"のサービス提供開始が、事務手続と工事の遅れから1ヶ月ほど延期されるとの情報も飛び込んできました。
そもそもADSLが、何故こんなに話題となるのでしょうか。低価格競争のきっかけを作った"Yahoo!BB"の場合、ADSLの基本接続料金(990円)とインターネット接続料(1290円)合わせて月額2280円。NTTなどの国内他社と比べてほぼ半額。ADSL先進国の韓国や米国などにも例を見ない世界最安値となっています。しかも、スピードは最大通信速度8メガビット。これは国内他社のADSLに比べて約5倍の速さです。大体どの程度かというと、5分間の音楽ソフトをダウンロードするのに、通常の電話回線なら数十分、ISDN(総合デジタル通信網)でも5分はかかるのが、なんとわずか3秒です。もちろん、ダイヤル・アップではないので、通話料はかからず使い放題。総務省により公表されたデータによると、ADSL加入者は今年に入ってから急速に増えつづけ、6月30日現在、30万人に迫る勢いです。
具体的な話をしましょう。現在、わが家(二人)では某接続業者から月額2000円で時間無制限のインターネット接続サービスを受けています。いわゆる家族割引が適用され、一人当たり月額1680円(税込み)×2。さらにNTTの回線使用料と通話料(これが大きい!)が加わります。しかし、先に挙げたADSLサービスであれば、2280円。もろもろ加わっても2500円程度。いろんなリスクを考え、これまでの接続業者との契約も最低料金で継続するとすれば、これにプラス1000円。通話料がかからず、スピードが速く、常時接続が可能ならば、絶対こちらが得なのです。
しかし、不安材料もあります。まず、本当にこのサービス、この値段で大丈夫なのかという問題。早速サービス提供の延期が報道されました。「事業がうまくいかないと途中で投げ出す可能性もある」との指摘もあります。また、この圧倒的な低価格は広告収入頼みなのだそうですが、その一方でインターネット広告は現在どんどん縮小しているとの情報をよく耳にします。もう既にこの市場から資金繰りの悪化のため撤退が相次いでいることも指摘できるでしょう。ユーザー・サポートが有料なのも考えものです。
そして、このサービスそのものの賞味期限が、数年程度だということも、消費者にとって悩ましい限りです。というのも、高速・常時接続サービスの本命は、光ファイバだといわれ、これが普及すればADSLは太刀打ちできません。しかし、現在のところ光ファイバサービスは、一戸建てに住んでいる一般ユーザー向けで、月額6100円・初期費用27900円。これに加えてプロバイダー料金を加えればおよそ月額8000円程度。ADSLはいまのところ価格面や既存のインフラを使える点において優位性を保っています。
わが家でも本気で導入を考え始めました。