ブロードバンドの法律学(I)―展開の早い通信サービス


先日、非常勤講師をしている大学の懇親会があり、その席上、ある経営学者とこんなやりとりをしてしばし時を過ごしました。

「世は、ブロードバンドの大合唱。最近、インターネット関連の雑誌に目を通すとブロードバンド。テレビ・コマーシャルでもブロードバンドってな具合に大騒ぎしているけど、あれいったい何なんだろうね。つい、この前ISDNがどうしたとかいってたのに、今度はADSL。光ファイバはどこへ行っちゃったんだろ。そういえば、今度、ソフトバンクがヤフーを通じて、新サービス"Yahoo!BB"を展開するんだって。常時接続料金をこれまでの半額以下にして低価格競争を仕掛けるらしいよ。これってダンピングでしょ。こういうのどう考えるの法律家は…」。

とまぁ、ちょっとお酒も入っているせいか、質問だか何だかいまいち図りかねる問いを次から次へとしてきました。もちろん、この先生はコンピュータにたいへん詳しい方なので、まさかこれらのサービス内容を知りたくて話し掛けてきたのではないはずです。そのときは、ある程度質問の内容を確かめ、法律的に想定しうる問題を勝手に予想しながら答えていったのですが、あまりにも展開の早い通信サービスの移り変わりに関心を持ち、帰りの電車でこれはちょっと見ておかなければならないなと思ったわけです。

これまで比較的議論されてきたのは、インターネット接続業者(いわゆるプロバイダ)との取引をめぐる問題。しかし、これからお話するのは通信費とその品質の問題です。

よく耳にする「ブロードバンド」。直訳すれば読んで字の如く「広帯域」。つまり、幅が広いこと。道路だったら車線が多いこと、水道ならば管の径が太いこと。一定時間に送ることができる情報量が、他と比べて多いことをこう呼びます。

これまでインターネットに接続する場合、家庭でのごく普通の回線スピードは最高で56kbps(kbpsは一秒間にどれだけ情報を送ることができるかを示す単位)でした(わたしはいまでもコレです)。昨年、よくコマーシャルでやっていたISDNでも最高128kbpsでした。これに比べブロードバンドでは、はるかに高速(500kbps以上)の通信が可能になります。しかも、いちいち電話をかけるやり方(ダイヤルアップ接続)ではなく、つなぎっぱなし(常時接続)も可能です。

いま、わたしたちがブロードバンドを手にするには、いくつかの方法が考えられます。たとえば、ケーブルテレビ回線を利用したり、電力線、無線さらには光ファイバ網を利用する手もあります。しかし、いま注目されているのはADSL。Asymmetric Digital Subscriber Lineの略で、日本語では「非対称デジタル加入者線」という。「非対称」というのは自分のコンピュータから情報をインターネットに送る場合とインターネットから受け取る場合とでスピードが違うことに由来しています。ヤフーのサービスもまさにこれで、今後、ブロードバンドをめぐる価格競争の台風の目になるのは間違いありません。これまでの電話線を利用でき、さまざまな点で導入が楽であることから急激に加入者を増やしているサービスです。(つづく)


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