法 律 部 門
これまで、ウルグアイ・ラウンドの合意内容および各国における国内実施
のための法制度の改正・整備の状況等について検討してきた。また、今後
WTO協定がどのように実施されているかを特に紛争処理等側面から検討を
加えていく。
経済法の一般理論についての全体的な考察に加え、競争法と知的財産権、
とりわけ著作権との関係をめぐる調査・研究を行なった。なお、来年度、こ
れまでの一連の研究成果として、慶應義塾大学出版会から産研叢書の一冊と
して『著作物流通と独占禁止法』(石岡克俊著)が刊行される。
l 石岡克俊「エッセンシャル・ファシリティ理論についての覚書」
(公正取引協会委託研究報告書、2001年3月)
l 石岡克俊「著作物再販制度に対する公取委の姿勢表明に寄せて」
(文化通信、2001年3月)
消費者を取り巻く環境の変化に伴い、消費者の意識も変化しつつある。イ
ンターネットの普及等情報化が進み、個人情報の保護の必要性がこれまで以
上に認識されるようになってきた。わが国においても、個人情報保護基本法
の制定に向けての議論が深まりを見せてきており、これらの検討においても
これまでの事例・判例の検討は重要性をもつ。
l 山口由紀子「消費者取引をめぐる紛争解決と消費行政」
(国民生活研究40巻40号、2001年3月)
平成12年度4月に導入された介護保険法も、施行より一年を経過した。
制度の定着には未だ時間を要し、かつその制度を現時点で評価する事は難し
い。しかし今後の高齢社会を支える社会福祉サービスと、地方分権の促進を
考えるには、極めて重要な制度的変化が生じ始めている。社会保障法の今後
の姿を探るためには、この研究は欠かせないものと考えられる。平成12年
度は、従って社会保障制度の全体像の見直しを行い、次年度に研究を継続す
る。
近年の労働判例については、社会情勢の変化を受け、整理解雇等に関する
判例法理が多少変化するなど、今までの法理の再検討が主張されている。同
時に、平成12年9月には、「就業規則の一方的変更」に関する最高裁判決が
3件たて続き、それまでの裁判例が形成してきた合理性の基準が、再論され
ている。1990年代に入ってからの労働法を取り巻く状況は変化が著しく、
かつ個別的労働関係法の改正もたて続いている。平成12年度は、これら注
目された新しい裁判例の検討を行った。
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