KEO Discussion Paper No.52

「環境分析用産業連関表応用:ITSのCO2負荷計算」


概要

 Intelligent Transport System(ITS)は、将来の交通システムとして注目を浴びつつある。交通の制御をうまくすることによって、エネルギー消費量や環境負荷を減らしたり、交通事故を未然に防いだり、あるいは輸送の時間短縮によって生産性を上げたりするなどITSはいろいろな点で期待されている。我々はここでITSのCO2負荷計算を重点的に行う。ITSを作り上げるには当然いろいろな素材が必要である。それを作るために回りまわってCO2が排出される。しかし、ITSがいったん出来上がると、乗用車やトラックからのCO2排出が抑制される。インフラ投資・車載装備によるCO2の増加分と経常運転による減少分を差し引きしてこそ、ITSがCO2削減に効果があるかの判断材料となる。
 もちろんどれだけ投資を行うのか、またどこに設置するのかによってその結果が大きく食い違う。そのためITSの基本想定プランは、ここでは建設省土木研究所のプランに則したものである。だからこの計算結果からCO2負荷低減にあまり効果が見られないとしても、ITSそのものに意味がないと判断するべきではない。これはあくまで基本プランであって、CO2負荷低減に効果のある個所はどこであるのかを逆に考えていく判断材料にもなる。
 ここで行う分析は、国の産業連関表にエネルギーCO2負荷を追加した環境分析用産業連関表(1)を使用する。従来の道路にITSのインフラを整備するために素材がどれだけいるか、その投資によって回りまわってどれだけCO2が発生するのか。また、車載のためにどれだけ新たな装備がいるのか、それを作るために直接・間接効果によるCO2がどれだけ発生するのか。さらに、ITSが導入されればどれだけガソリンや軽油の消費量がどれだけ低下するのか、その結果総合的にどれだけCO2負荷が低減するのか。これらのことを、オープン産業連関モデルによって分析する。
KEO Discussion Paper一覧へ戻る