第1 競争者間の総代理店契約
◇ 1 考え方  競争関係にある事業者間において総代理店契約が締結されることがある。供給業者が自ら又は他の事業者を通じて参入すればより有効な競争単位としての機能を発揮し、市場における競争がより一層促進されることが期待されるところ、競争者間で総代理店契約が締結されると、これらの間の競争がなくなったり、また、総代理店となる事業者の市場における地位が一層強化、拡大されたりすることにより、市場における競争が阻害されることがある。競争者間の総代理店契約がこの様な競争阻害効果を有するかどうかは、総代理店となる事業者の市場における地位、供給業者の総合的事業能力、当該市場の状況等によって異なるものである。

◇ 2 独占禁止法上問題となる場合
  • (1)
     総代理店となる事業者が契約対象品と同種の商品(契約対象品と機能・効用が同様であり、相互に競争関係にある商品をいう。以下第一において同じ。)を製造又は販売している場合であって、その市場におけるシェアが10%以上であり、かつ、その順位が上位3位以内であるときに、当該契約対象商品の供給業者と総代理店契約をすることは、競争阻害効果が生じる場合がある。競争阻害効果が生じるかどうかは、戸別具体的なケースに即し、以下の事項を総合的に考慮して、市場の競争に与える影響の程度を判断することとなり、競争阻害効果が生じると認められる場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定13項(拘束条件付取引))。
     @ 総代理店となる事業者のシェア、順位及びその競争者との格差の程度並びにそれらの変化の程度
     A 供給業者の総合的事業能力(売上高、ブランド力、市場における地位等)
     B 契約対象商品の国内市場におけるシェア及び順位
     C 当該市場における競争の状況(競争者の数、シェアの変動状況、新規参入の難易性等)
     D 契約対象商品の財としての特質、総代理店となる事業者の製造又は販売する商品と契約対象商品との競合の程度・密接な代替品の有無および契約対象商品の販売価格の状況
     E 契約対象品の流通に関する状況(流通への新規参入の難易性等)
  • (2)
     総代理店となる事業者のシェアが25%以上、かつ、その順位が第一位である場合においても、上記(1)と同様に個別具体的なケースに即して判断するものであるが、この様な地位にある事業者が競争関係にある供給業者と総代理店契約をすることは、通常、競争阻害効果が生じることとなるおそれが強いので、特に次の事項を重点的に考慮して判断することとなる。
     @ 供給業者の総合的事業能力が大きくないかどうか。
     A 契約対象商品が既に国内市場においてある程度の地位を占めているものでないかどうか。

    ◇ 3 独占禁止法上問題とはならない場合
  • (1)
     上記2(1)、(2)のいずれにおいても、契約対象商品を国内市場で新たに販売開始するために行われるものであって、契約期間が短期間(契約期間が短期間であるかどうかは商品によって異なるが、3年ないし5年が一応の目安となる。)である場合、又は契約対象商品が総代理店となる事業者から技術供与を受けて製造され、若しくは当該事業者から製造委託されたものである場合は、原則として独占禁止法上問題とはならない。
  • (2)
     総代理店となる事業者が契約対象商品と同種の商品を製造又は販売している場合であって、その市場におけるシェアが10%未満又はその順位が第四位以下であるときに、当該契約対象商品の供給業者と総代理店契約をすることは、原則として独占禁止法上問題とはならない。

    流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針
    経済法関連法令・ガイドライン
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