第3 リベートの供与
◇ 1 考え方
  • (1)
     メーカーの流通業者に対するリベート(一般的には、仕切価格とは区別されて取引先に制度的又は個別の取引ごとに支払われる金銭をいう。)の供与の実態を見ると、仕切価格の修正としての性格を有するもの、販売促進を目的としたもの等様々である。このように、リベートは、様々な目的のために支払われ、また、価格の一要素として市場の実態に即した価格形成を促進するという側面も有することから、リベートの供与自体が直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
     しかし、リベートの供与の方法によっては、流通業者の事業活動を制限することとなり、独占禁止法上問題となる場合がある(注11)。

    ◇ 2 独占禁止法上問題となる場合
  • (1) 流通業者の事業活動に対する制限の手段としてのリベート
     流通業者に対し、メーカーの示した価格で販売しないためにリベートを削減する場合など、リベートを手段として、流通業者の販売価格、競争品の取り扱い、販売地域、取引先等についての制限が行われる場合には、前記第1及び第2において述べた考え方に従って違法性の有無が判断される(一般指定11項(排他条件付取引)、12項(再販売価格の拘束)又は13項(拘束条件付取引))。
     また、流通業者がいくらで販売するか、競争品を取り扱っているかどうか当によってリベートを差別的に供与する行為それ自体も、流通業者に対する違法な制限と同様の機能をもつ場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定4項(取引条件等の差別的取扱い)以下(2)、(3)及び(4)も同様。)。
     なお、いわゆる払込制(メーカーが流通業者からマージンの全部又は一部を徴収し、これを一定期間保管した後に、当該流通業者に払い戻すこと)が、流通業者に対する違法な制限の手段となっている場合又は違法な制限と同様の効果を持つ場合も、上記と同様に判断される。
  • (2) 占有率リベート
     メーカーは、流通業者の一定期間における取引額全体に占める自社商品の取引額の割合や、流通業者の店舗に展示されている商品全体に占める自社商品の展示の割合(占有率)に応じてリベートを供与する場合がある。
     このような占有率リベートの供与が、競争品の取り扱い制限としての機能を持つこととなる場合は、前記第二の2(流通業者の競争品の取扱いに関する制限)(2)において述べた考え方に従って違法性の有無が判断される。
     すなわち、市場における有力なメーカーが占有率リベートを供与し、これによって流通業者の競争品の取扱いを制限することとなり、その結果、新規参入者や既存の競争者にとって代替的な流通経路を容易に確保できなくなるおそれがある場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定4項、11項又は13項)。
  • (3) 著しく累進的なリベート
     メーカーは、例えば、数量リベートを供与するに当たり、一定期間の流通業者の仕入高についてランクを設け、ランク別に累進的な供与率を設定する場合がある。累進的名リベートは、市場の実態に即した価格形成を促進するという側面を有するものであるが、その累進度が著しく高い場合には、自社製品を他社製品よりも優先的に取り扱わせる機能をもつ。
     流通業者に対する著しく累進的なリベートの供与が、競争品の取扱い制限としての機能をもつこととなる場合は、前記第2の2(流通業者の競争品の取扱いに関する制限)(2)において述べた考え方に従って違法性の有無が判断される。
     すなわち、市場における有力なメーカーがこのようなリベートを供与し、これによって流通業者の競争品の取扱いを制限することとなり、その結果、新規参入者や既存の競争者にとって代替的な流通経路を容易に確保することができなくなるおそれがある場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定4項、11項又は13項)。
  • (4) 帳合取引の義務付けとなるようなリベートを供与する場合
     メーカーは、間接の取引先である小売業者に対しても、小売業者の当該メーカー商品の仕入れ高に応じて、直接に、又は卸売業者を通じてリベートを供与する場合がある。メーカーがこのようなリベートを供与する場合において、小売業者に対するリベートの供与額を計算するに当たって、当該メーカーの商品の仕入高、特定の卸売業者からの仕入高のみを計算の基礎とする場合には、帳合取引の義務づけとしての機能をもつこととなりやすい。
     このようなリベートの供与が、帳合取引の義務づけとしての機能をもつこととなる場合は、前記第二の4(2)(帳合取引の義務付け)において述べた考え方に従って違法性の有無が判断される。
     すなわち、このような機能を機能をもつリベートの供与によって当該商品の価格が維持されるおそれがある場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定4項又は13項)。

    流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針
    経済法関連法令・ガイドライン
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