第1 再販売価格維持行為
◇ 1 考え方
(1)
事業者が市場の状況に応じて自己の販売価格を自主的に決定することは、事業者の事業活動において最も基本的な事項であり、かつ、これによって事業者間の競争と消費者の選択が確保される。
メーカーがマーケティングの一環として、又は流通業者の要請を受けて、流通業者の販売価格を拘束する場合には、流通業者間の価格競争を減少・消滅させることになることから、このような行為は原則として不公正な取引方法として違法となる。
(2)
メーカーが設定する希望小売価格や建値は、流通業者に対し単なる参考として示されているものである限りは、それ自体は問題となるものではない(注2)。しかし、参考価格として単に通知するだけにとどまらず、その価格を守らせるなど、メーカーが流通業者の販売価格を拘束する場合には、上記(1)の行為に該当し、原則として違法となる。
- (注2)メーカーが希望小売価格を設定する場合においては、「正価」「定価」といった表示や金額のみの表示ではなく「参考価格」、「メーカー希望小売価格」といった非拘束的な用語を用いるとともに、希望価格を流通業者や消費者に通知する場合は、通知文書等において、希望価格はあくまでも参考であること、流通業者の販売価格はそれぞれの流通業者が自主的に決めるべきものであることを明示することが望ましい。
◇ 2 再販売価格の拘束
(1)
メーカーが流通業者の販売価格(再販売価格)を拘束することは、原則として不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定12項(再販売価格の拘束))。
(2)
再販売価格の拘束の有無は、メーカーの何らかの人為的手段によって、流通業者がメーカーの示した価格で販売することについての実効性が確保されていると認められるかどうかで判断される。
次のような場合には、「流通業者がメーカーの示した価格で販売することについての実効性が確保されている」と判断される。
- @ 文書によるか口頭によるかを問わず、メーカーと流通業者との間の合意によって、メーカーの示した価格で販売するようにさせている場合
(例)
- メーカーの示した価格で販売することが文書又は口頭による契約において定められている場合
- メーカーの示した価格で販売することについて流通業者に同意書を提出させる場合
- メーカーの示した価格で販売することを取引の条件として提示し、条件を受諾した流通業者とのみ取引する場合
- メーカーの示した価格で販売し、売れ残った商品は値引き販売せず、メーカーが買い戻すことを取引の条件とする場合
- A メーカーの示した価格で販売しない場合に経済上の不利益を課し、又は課すことを示唆する等、何らかの人為的手段を用いることによって、当該価格で販売させるようにさせている場合
(例)
- メーカーの示した価格で販売しない場合に出荷停止等の経済上の不利益(出荷量の削減、出荷価格の引き上げ、リベートの削減、他の製品の供給拒絶等を含む。以下同じ。)を課す場合、又は課す旨を流通業者に対し通知・示唆する場合
- メーカーの示した価格で販売する場合にリベート等の経済上の利益(出荷価格の引き下げ、他の製品の供給等を含む。以下同じ。)を供与する場合、又は供与する旨を流通業者に対し通知・示唆する場合
- 次のような行為を行い、これによってメーカーの示した価格で販売するようにさせている場合
- (a)メーカーの示した価格で販売しているかどうかを調べるため、販売価格の報告徴収、店頭でのパトロール、派遣店員による価格監視、帳簿等の書類閲覧等の行為を行うこと
- (b)商品に秘密番号を伏すなどによって、安売りを行っている流通業者への流通ルートを突き止め、当該流通業者に販売した業者に対し、安売り業者に販売しないように要請すること
- (c)安売りを行っている流通業者の商品を買い上げ、当該商品を当該流通業者又はその仕入先である流通業者に対して買い取らせ、又は買い上げ費用を請求すること
- (d)安売りを行っている流通業者に対し、安売りについての近隣の流通業者の苦情を取り次ぎ、安売りを行わないように要請すること
(3)
再販売価格の拘束の手段として、取引拒絶やリベートの供与等についての差別的取扱が行われる場合には、その行為自体も不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定2項(その他の取引拒絶)又は4項(取引条件等の差別的取扱))。
(4)
上記(2)において、メーカーが流通業者に対し示す価格には、確定した価格のほか、次のような価格も含まれる。
(例)
- メーカー希望小売価格の◯%引き以内の価格
- 一定の範囲内の価格(□円以上△円以下)
- メーカーの事前の承認を得た価格
- 近隣店の価格を下回らない価格
- 一定の価格を下回って販売した場合には警告を行うなどにより、メーカーが流通業者に対し暗に下限として示す価格
(5)
上記(2)、(3)及び(4)の考え方は、メーカーが直接の取引先に対して行う場合のみならず、メーカーが間接の取引先である小売業者や二次卸等に対し、卸売業者を通じて、あるいは自ら直接に、その販売価格を拘束する場合にもあてはまる(一般指定12項、2項又は4項)。
(6)
なお、次のような場合であって、メーカーの直接の取引先が単なる取次として機能しており、実質的にみてメーカーが販売していると認められる場合には、メーカーが当該取引先に対して価格を指示しても、通常、違法とはならない。
@ 委託販売の場合であって、受託者は、受託商品の保管、代金回収等についての善良な管理者としての注意義務を越えて商品が滅失・毀損した場合や商品が売れ残った場合の危険負担を負うことはないなど、当該取引が委託者の危険負担と計算において行われている場合
A メーカーと小売業者(又はユーザー)との間で直接価格について交渉し、納入価格が決定される取引において、卸売業者に対し、その価格で当該小売業者(又はユーザー)に納入するよう指示する場合であって、当該卸売業者が物流及び代金回収の責任を負い、その履行に対する手数料分を受け取ることとなっている場合など、実質的にみてメーカーが販売していると認められる場合
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