第6 継続的な取引関係を背景とするその他の競争阻害行為
 上記第5までに掲げた行為のほか、継続的な取引関係を背景として、例えば次のような行為をすることは、独占禁止法上問題となる。

◇ 1 対抗的価格設定による競争者との取引の制限
  • (1)
     事業者が、自己の商品の価格を市場の状況に応じて引き下げることは、まさに競争の現れであり、競争政策の観点から積極的に評価できよう。しかし、次の(2)のように競争者に対抗して価格を引き下げた場合には自己との取引を継続することを相手方に約束させることは、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあるものであり、市場を閉鎖する程度が大きい場合には独占禁止法上問題となる。
  • (2)
     市場における有力な事業者が、継続的な取引関係にある取引の相手方に対し、その取引関係を維持するための手段として、自己の競争者から取引の申込みを受けたときには必ずその内容を自己に通知し、自己が対抗的に販売価格を当該競争者の提示する価格と同一の価格又はこれよりも有利な価格に引き下げれば、相手方は当該競争者とは取引しないこと又は自己との従来の取引数量を維持することを約束させて取引し、これによって当該競争者の取引の機会が減少し、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるおそれがある場合には、当該行為は不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定11項(排他条件付取引)又は13項(拘束条件付取引))。

    ◇ 2 継続的な取引関係を背景とする優越的地位の濫用行為
     継続的な取引関係を背景として取引上優越した地位にある事業者が、取引先事業者に対し、取引の条件又は実施について、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えるような行為を行うことは、取引先事業者の自由かつ自主的な判断による取引を阻害し、また正当な条件で取引しようとする者や行為者の競争者を競争上不利にさせるおそれがあるものである。
     このような行為は、不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定14項(優越的地位の濫用))。
     なお、継続的な取引関係を背景とする優越的地位の濫用は、親事業者と下請事業者との取引(下請取引)においても行われやすいが、下請取引においてこのような行為が行われる場合には、下請代金支払遅延等防止法第4条の規定に違反する。

    流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針
    経済法関連法令・ガイドライン
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