第1部 事業者間取引の継続性・排他性に関する独占禁止法上の指針
  • 1
     生産財・資本財を中心とした事業者間の取引では、特定の取引先事業者と継続的に取引が行われている場合がある。
     事業者が公正かつ自由な競争を通じ、価格、品質、サービス等の取引条件の優劣に基づいた自主的判断によって取引先の選択を行い、その結果、事業者間の取引が継続的なものとなっているのであれば、独占禁止法上問題となるものではない。
     また、事業者は取引先を選択するに当たり、個々の取引における価格、品質、サービス等の取引条件の優劣に加え、供給の安定性、技術開発力、自己の要求への対応の弾力性など購入先の事業者総体としての評価をも併せ考慮する場合がある。事業者が取引先から購入しようとする商品・役務の取引条件の優劣の判断をかかる観点からも行い、その結果、事業者間の取引が継続的なものとなっているのであれば、独占禁止法上問題となるものではない。
     しかし、事業者が、既存の取引関係の継続を確実にするために他の事業者との間で相互に既存の取引関係を尊重しこれを優先させることを話し合ったり、他の事業者と共同して競争者を排除するような行為を行えば、顧客の獲得をめぐって行われる競争が制限されたり、新たな競争者の参入が妨げられ、市場における競争が制限されることとなる。また、事業者が、自己の競争者と取引しないことを条件として取引先事業者と取引したり、取引先事業者が自己の競争者と取引しないよう圧力をかけたりすれば、新規参入者の参入阻害など市場における競争に悪影響を及ぼすこととなる。
  • 2
     事業者は、いわゆる安定株主作りのために取引先事業者と株式を相互に持ち合ったり、取引の円滑化のために取引先事業者の株式を所有したりする場合がある。
     会社が他の会社の株式を取得し、又は所有することは、競争秩序に影響を及ぼす場合もあることから、独占禁止法上各種の規制がなされているが、これらの規制に抵触しない限り、会社は原則として自由に他の会社の株式を取得し、又は所有することができる。
     しかし、株式の取得又は所有自体が規制の対象とならない場合であっても、事業者が取引先事業者の株式を所有していることを手段として株式を所有されている取引先事業者が自己の競争者と取引しないようにさせて取引を継続したり、株式所有関係にある事業者との取引を優先して取引を継続したりすれば、新規参入者等の株式所有関係にない事業者の参入阻害など市場における競争に悪影響を及ぼすことになる。
     また、特定の事業者が多くの取引先事業者の株式を所有したり、種々の業種に関する事業者が相互に株式を持ち合い、役員を派遣することなどによって、いわゆる企業集団が形成されている場合があるが、同一の集団に属する事業者間の取引についても同様に考えられる。
  • 3
     以下では、主として生産財・資本財の生産者と需要者との間の取引を念頭に置いて、継続的な取引関係を形成・維持するために行われ、又はこれを背景として行われる、競争者の新規参入を阻止し又は競争者を排除するおそれのある行為を中心に、主として不当な取引制限及び不公正な取引方法に関する規制の観点から、独占禁止法上の考え方を明らかにしている。

    流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針
    経済法関連法令・ガイドライン
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