はじめに
  • 1
     流通・取引に関する慣行は、歴史的、社会的背景の中で形成されてきたものであり、世界の各国において様々な特色を持っているが、その在り方については、常に見直され、より良いものへと変化していくことが求められているものである。我が国の流通・取引慣行についても、国民生活に真の豊かさが求められ、また、経済活動がグローバル化し我が国の国際的地位も向上する中で、消費者の利益が一層確保され、我が国の市場が国際的により開放的になるようなものへと変化していくことが求められている。そのためには、公正かつ自由な競争を促進し、市場メカニズムの機能を十分に発揮しうるようにしていくことが重要であり、具体的には、1事業者の市場への自由な参入が妨げられず、2それぞれの事業者の取引先の選択が自由かつ自主的に行われ、3価格その他の取引条件の設定がそれぞれの事業者の自由かつ自主的な判断で行われ、また、4価格、品質、サービスを中心とした公正な手段による競争が行われることが必要である。
     本指針は、我が国の流通・取引慣行について、どのような行為が、公正かつ自由な競争を妨げ、独占禁止法に違反するのかを具体的に明らかにすることによって、事業者及び事業者団体の独占禁止法違反行為の未然防止とその適切な活動の展開に役立てようとするものである。
  • 2
     本指針第1部は、主として生産財・資本財の生産者と需要者との間の取引を念頭に置いて、事業者間取引の継続性・排他性に関する独占禁止法上の指針を、第二部は、主として消費財が消費者の手元に渡るまでの流通取引を念頭に置いて、流通分野における取引に関する独占禁止法上の指針を示したものである。
     しかし、生産財・資本財と消費財とで独占禁止法上の考え方を異にするものではない。すなわち、消費財について、第2部で考え方が示されていない事項であっても、第1部で示されているものについては、第1部と同様の考え方によって判断される。また、生産財・資本財について、第1部で考え方が示されていない事項であっても、第2部で示されているものについては、第2部と同様の考え方によって判断される。
     また、第3部は、財の性質にかかわらず国内市場全域を対象とする総代理店に関する独占禁止法上の指針を示したものであり、第3部で考え方が示されていない事項であっても、第1部又は第2部で示されているものについては、第1部又は第2部と同様の考え方によって判断される。
     本指針は、主として財の取引について独占禁止法上の考え方を示したものであるが、役務の取引についてもその考え方は基本的には同様である。
  • 3
     本指針で取り上げた行為類型のうち、第1部の「顧客獲得競争の制限」及び「共同ボイコット」並びに第2部の「再販売価格維持行為」等については、原則として独占禁止法上違法となるものである。一方、それ以外の行為類型については、当該行為が市場における競争に与える影響を個別具体的に検討した上で、独占禁止法に違反するか否かが判断されるものである。
     また、本指針は、流通・取引慣行に関し、独占禁止法上問題となる主要な行為類型についてその考え方を示したものであるが、独占禁止法上問題となる行為はこれに限られるものではない。例えば、価格カルテル、供給量制限カルテル、購入数量カルテル、入札談合などは原則として独占禁止法に違反するものであることはいうまでもない。したがって、本指針に取り上げられていない行為が独占禁止法上問題となるかどうかは、同法の規定に照らして個別具体的に判断されるものである。
     事業者等にとって、個々の具体的ケースが本指針に照らして独占禁止法上問題となるかどうかについて判断が容易でないこともあると考えられるので、今般本指針の作成に伴い流通・取引慣行に係る事前相談制度(付2)を新たに設け、個別の相談に応じることとした。

    流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針
    経済法関連法令・ガイドライン
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