第3 競争を実質的に制限することとなる場合(3 共同出資会社の場合)
共同出資会社の場合も、上記2の具体的判断要素にしたがって、競争を実質的に制限することとなるか否かについて判断するが、その際には以下の点に留意する必要がある。
なお、共同出資会社の場合、共同出資会社の設立・運営に関する契約、協定、合意等が法第3条等の規定に違反する場合もあるが、この項では、法第4章の観点からの考え方を示している。
- (1)出資会社相互間の関係
共同出資会社に出資している出資会社相互間には、直接の株式所有関係はなくとも、共同出資会社を通じて間接的に結合関係が形成・維持・強化される(第1の1(1)エ)。
共同出資会社の設立については、新規分野への事業拡大、技術開発、生産・販売活動の合理化といった競争促進的な側面があり得るものの、例えば共同生産会社の場合はコストの共通化により、価格競争の余地が減少したり、共同出資会社の運営に際して出資会社相互間の情報交換の場となる可能性も否定できず、特に出資会社が競争関係にある場合は競争に与える影響がより大きい。
共同出資会社の出資会社相互間の競争に与える影響は、共同出資会社の活動内容によって大きく異なることから、出資会社間の具体的な契約内容や結合の実態に応じた判断を行うこととなる。また、出資会社相互間に取引関係がある場合には、その取引の内容、事業全体に占める割合等も考慮する。
- (2)共同出資会社の形態・目的
共同出資会社の形態・目的としては、生産部門を統合する場合(共同生産会社)、販売部門を統合する場合(共同販売会社)、購入部門を統合する場合(共同購入会社)、新市場への事業拡大を目的とする場合、国内の会社が外国会社との提携を目的とする場合があり、それぞれの類型に応じて、競争への影響をみることとなる。このうち、特に販売面での統合を行う場合には、市場における競争に及ぼす影響がより大きい。
<例>
生コンクリートの製造業者4社が、共同出資会社を設立して生コンクリートの製造委託を行おうとする場合において、従来4社4工場で生コンクリートの製造、販売をそれぞれ独自に行っていたものを当事会社4社による共同生産会社1社に集約することは、出資会社間の販売面での競争を実質的に制限することとなるおそれがあるとされた(平成7年度)。
- (3)出資会社の業務と共同出資会社の業務との関係
出資会社と共同出資会社の業務の関連性により、競争に影響を及ぼす程度が異なってくる。例えば、出資会社が行っていた特定の事業部門の全部を統合することにより、出資会社の業務と分離させる場合には、出資会社と共同出資会社相互間の業務の関連性は薄いと考えられる。他方、商品又は役務の機能及び効用が同様である事業部門の一部を統合することにより、出資会社と共同出資会社が同一の市場に存在することとなる場合には、共同出資会社の運営を通じ出資会社相互間に協調関係が生じる可能性がある。
<例>
ポリプロピレン樹脂製造販売事業を営む2社が、国際競争力の強化等を目的として共同出資会社を設立し、両社の行っている同事業の全部を統合しようとする場合において、出資会社は、それぞれ他社とポリプロピレン樹脂の共同生産の事業提携を行っていることから、実質的にはポリプロピレン樹脂部門の一部統合とみなせるため、共同出資会社及び各当事会社の提携事業の生産面及び販売面での協調関係が醸成されるおそれがあるとされた(平成7年度)。
株式保有、合併等に係る「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」の考え方
経済法関連法令・ガイドライン
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