第3 競争を実質的に制限することとなる場合(1 「競争を実質的に制限することとなる」の解釈)
- (1)「競争を実質的に制限する」の考え方
判例(東宝株式会社ほか1名に対する件(昭和28年12月7日東京高等裁判所判決))では、「競争を実質的に制限する」について、次のような考え方が示されている。
- ア 株式会社新東宝(以下「新東宝」という。)は、自社の製作する映画の配給について自ら行うこともできたが、東宝株式会社(以下「東宝」という。)との協定により、当該配給をすべて東宝に委託することとし、自らは、映画の製作のみを行っていた。新東宝は、当該協定失効後も引き続き当該協定の内容を実行していたが、昭和24年11月に、右協定の失効を理由として、新東宝の製作した映画は自らこれを配給する旨を言明したことから、東宝との間に紛争が生じた。この紛争の中で、右の協定が独占禁止法違反であるとして、公正取引委員会による審判が開始され、公正取引委員会は、昭和26年6月5日の審決において、東宝と新東宝との協定は、法第3条(不当な取引制限)及び第4条第1項第3号(注)の規定に違反すると認定した。
(注)法第4条第1項(現行法では、この規定は存在しない。)
事業者は、共同して左の各号の一に該当する行為をしてはならない。
第3号 技術、製品、販路又は顧客を制限すること
- イ 被審人東宝の審決取消しの訴えに対して、東京高等裁判所は、競争の実質的制限に関し、「競争を実質的に制限するとは、競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団がその意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる状態をもたらすことをいう」と判示した。
- (2)「こととなる」の考え方
法第4章の各規定は、法第3条又は法第8条の規定と異なり、一定の取引分野における競争を実質的に制限する「こととなる」場合の企業結合を禁止している。この「こととなる」とは、企業結合により、競争の実質的制限が必然ではないが容易に現出し得る状況がもたらされることで足りるとする蓋然性を意味するものである。したがって、法第4章では、企業結合により市場が非競争的に変化して、当事会社が単独で又は他の会社と協調的行動をとることによって、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することができる状態が容易に現出し得るとみられる場合には、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなり、禁止される。
株式保有、合併等に係る「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」の考え方
経済法関連法令・ガイドライン
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