第2 一定の取引分野(3 取引地域(地理的範囲))
一定の取引分野の地理的範囲は、上記2により画定された商品・役務について、当事会社グループとその取引の相手方の事業活動の実態に即して画定される。
その際、商品の特性(商品の鮮度、破損性、輸送の困難性等)、輸送手段とその費用との関係等、供給側であれば生産能力、販売網等の事業区域、需要側であれば買い回る範囲(消費者の購買行動等)等が考慮される。
当事会社の事業区域が国外に及んでいる場合であっても、独占禁止法により保護すべき競争は日本国内における競争であると考えられるので、国内の取引先の事業活動の範囲を中心としてみることになる。
したがって、当事会社グループが商品の供給側であれば、通常、輸出先を含めた取引分野を画定することはない(日本からの輸出取引に係る一定の取引分野がそれ自体で成立することはあり得る。)。
- <例1 生コンクリート>
生コンクリートの製造・販売に関しては、練り混ぜを開始してから1時間半以内に打設を行わなければならないという商品の性格上、運送時間が制約され、時間・距離により需要者(工事業者)群と供給者群の範囲が画定される。この範囲に対応して、生コンクリート製造業者の協同組合が組織されていることから、協同組合の地区内における生コンクリートの製造・販売分野に「一定の取引分野」が成立すると判断した(平成7年度)。
- <例2 セメント>
当事会社を含む大手メーカー5社は、全国的に事業展開しており、これらのメーカーは独自に、又は協同販売会社を通じて全国的にセメントを販売しているので、本件合併により影響を受ける地域は全国となる。他方、セメントは重量物であり、販売価格に占める輸送コストの比率が高いため、一般的に、各メーカーの物流体制や営業体制は北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州及び沖縄の各ブロックを管轄地域とする支店を単位として運営されていることから、全国及び各ブロックにおけるセメントの販売分野に「一定の取引分野」が成立すると判断した(平成6年度)。
- <例3 卸売市場の卸売会社>
花きの地方卸売市場を開設している5社が、新設の中央卸売市場に入場するに当たり2社に統合しようとする場合において、5社に登録している小売買参人の78.1%が20km圏内に分布していること等から、新市場を中心とする20km圏内における花き卸売分野に「一定の取引分野」が成立するものと判断した(平成8年度)。
- <例4 小売量販店>
全国量販店と地域量販店の合併において、福岡市における大規模小売店は、行政区の区域とは無関係に同市の中心部に集中しており、また、当事会社の顧客の来店範囲も福岡市のほぼ全域及びその周辺の市町となっていることから、福岡市全体で「一定の取引分野」が成立すると判断した(平成5年度)。
株式保有、合併等に係る「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」の考え方
経済法関連法令・ガイドライン
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