第1 競争への影響をみるべき企業結合(4 営業譲受け等)
- (1)
営業の全部の譲受けは、譲渡会社の事業活動が譲受会社と一体化するという意味では、競争に与える影響は合併に類似するものであるが、譲受け後は譲渡会社と譲受会社との間につながりはないので、譲受対象部分が譲受会社に新たに加わる点に着目すれば足りる。営業の需要部分の譲受け及び営業上の固定資産の譲受けについても、同様である。
なお、譲受対象部分に関しては、譲受会社と既に結合関係が形成されている会社を含めて結合関係が形成・維持・強化されることになる。
- (2)
営業の重要部分及び営業上の固定資産の重要部分の譲受けにおける「重要部分」とは、譲受会社ではなく譲渡会社にとっての重要部分を意味し、当該譲渡部分が一つの経営単位として機能し得るような形態を備え、譲渡会社の営業の実態からみて客観的に価値を有していると認められる場合に限られる。
このため、「重要部分」に該当するか否かについては、譲渡される営業の市場における個々の実態に応じて判断されることになるが、譲渡会社の年間売上高(又はこれに相当する取引高等。以下同じ。)に占める譲渡対象部分に係る年間売上高の割合が5%以下であり、かつ、譲渡対象部分に係る年間売上高が一億円以下の場合には、通常、「重要部分」には該当しないと考えられる。
- (3)
次のような場合は、結合関係が形成・強化されるものではないので、通常、競争への影響をみるべき企業結合に当たらない。
- ア 親子会社(一方が他方の発行済株式総数の50%超の株式を所有している場合)間の営業又は営業上の固定資産の譲受け(以下「営業等の譲受け」という。)
- イ 兄弟会社(それぞれの発行済株式総数の50%超の株式を所有する会社が同一である場合)間の営業等の譲受け
- ウ 100%出資による分社化のための行われる営業等の譲受け
- (4)
営業の賃借(賃借人が賃借した営業を自己の名及び自己の計算において経営し、賃借人に賃借料を支払う賃貸借契約の履行として行われる行為をいう。)、営業についての経営の受任(会社が他の会社にその経営を委託する契約の履行として行われる行為をいう。)及び営業上の損益全部を共通にする契約の締結(2社以上の会社間において、一定の期間内の営業上の損益全部を共通にすることを約定する契約の締結をいう。)についても、営業等の譲受けに準じて取り扱うこととする。
なお、これらの契約の内容いかんによって、(1)で述べるところと異なり、両当事会社と既に結合関係にある会社すべての間に結合関係が形成・維持・強化される場合があり得る。
株式保有、合併等に係る「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」の考え方
経済法関連法令・ガイドライン
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