第1 競争への影響をみるべき企業結合(2 役員の兼任)
- (1)役員の範囲
「役員」とは、法第2条第3項において「理事、取締役、業務を執行する無限責任社員、監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の営業の主任者をいう」と定義されている。すなわち、株式会社・有限会社・相互会社の取締役・監査役、合名会社・合資会社の業務を執行する無限責任社員、商法上の支配人(商法第37条)、商法で支配人と同じ権限を有するとみなされる商業使用人(例えば、本店総支配人、支店長、営業本部長)等である。
「これらに準ずる者」とは、取締役、監査役等に当たらないが、相談役、顧問、参与等の名称で、事実上役員会に出席するなど会社の経営に実際に参画している者をいう。
部長、課長、係長、主任等の名称のみを有する者は、従業員であって役員ではない。
「従業員」とは、法第13条第1項かっこ書に「継続して会社の業務に従事する者であって、役員以外の者」とあり、臨時雇は含まれないが、出向者については従業員に含める。
なお、会社の役員又は従業員が退職手続を経て他の会社の役員に就任する場合は、兼任規制の対象とはならない。
- (2)役員兼任による結合関係
会社の役員又は従業員が他の一の会社の役員を兼任することにより、兼任当事会社間で結合関係が形成・維持・強化されるのは、次の場合である。
- ア 兼任当事会社のうちの一社の役員総数に占める他の当事会社の役員又は従業員の割合が過半である場合
- イ 兼任する役員が双方に代表権を有する場合
- ウ 上記以外の場合は、次に掲げる事項を考慮して判断する。
- (ア)常勤又は代表権のある取締役による兼任か否か
- (イ)兼任当事会社のうちの一社の役員総数に占める他の当事会社の役員又は従業員の割合
- (ウ)兼任当事会社間の株式所有状況
- (エ)兼任当事会社間の取引関係(融資関係を含む。)、業務提携の関係
ただし、次の場合は、原則として結合関係が形成・維持・強化されることはない。
- 代表権のない者のみによる兼任であって兼任当事会社のいずれにおいても役員総数に占める他の当事会社の役員又は従業員の割合が10%以下である場合
- 株式所有比率が10%以下の会社間における常勤取締役でない者のみによる兼任であって、兼任当事会社のいずれにおいても役員総数に占める他の当事会社の役員又は従業員の割合が25%以下である場合
- (3)結合関係の範囲
上記役員兼任により兼任当事会社間に結合関係が形成・維持・強化される場合には、各当事会社と既に結合関係が形成されている会社を含めて結合関係が形成・維持・強化されることとなる。
株式保有、合併等に係る「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」の考え方
経済法関連法令・ガイドライン
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