はじめに
 独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)。以下「法」という。)第4章では、会社の株式(社員の持分を含む。以下同じ。)の取得若しくは所有(以下「保有」という。)(法第10条)、役員兼任(法第13条)、会社以外の者の株式の保有(法第14条)又は会社の合併(法第15条)若しくは営業譲受け等(法第16条)(以下これらを「企業結合」という。)が、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による企業結合が行われる場合を禁止している。禁止される企業結合については、法第17条の2の規定に基づき、排除措置が講じられることになる。
 公正取引委員会としては、法第4章において、どのような企業結合が、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるかについて、具体的な企業結合の例を挙げながら明らかにすることによって、公正取引委員会の法運用に関する事業者の予測可能性を高め、運用の透明性を確保するべく「株式保有、合併等に係る『一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合』の考え方」(以下「本考え方」という。)を策定することとした。
 本考え方においては、これまでの公正取引委員会の法運用の経験に基づき、まず、第1では、競争への影響をみるべき企業結合の類型を示している。次に、第2では一定の取引分野の画定について、第3では競争を実質的に制限することとなる場合について、具体例を挙げながら考え方を示している。ただし、具体例は、本考え方の記述についての具体的な理解を助けるために、これまで事前相談又は届出があった主要な企業結合行為を例示として挙げたものであり、そこに示されている公正取引委員会の判断は、その時点において当該企業結合行為について示されたものであって、当事会社などから提出された限られた情報・資料を基に判断されたものも存在する。本考え方に示されていないものを含め、具体的な企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるかどうかについては、法の規定に照らして、個々の事案ごとに判断されることになる。
 今後、公正取引委員会は、株式保有、合併について、報告・届出の対象となるか否かにかかわらず、本考え方に基づき判断することとする。
 なお、本考え方の策定に伴い、「会社の株式所有の審査に関する事務処理基準」(昭和56年9月11日公正取引委員会事務局)、「会社の合併等の審査に関する事務処理基準」(昭和55年7月15日公正取引委員会事務局)及び「小売業における合併等の審査に関する考え方」(昭和56年7月24日公正取引委員会事務局)は、廃止する。

株式保有、合併等に係る「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」の考え方
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