輸出カルテルと国際的協定に関する独禁法の解釈について(メモ)



  1. 最近いわゆるオーダリーマーケティングの一手段として輸出入取引法に基づく輸出カルテル(以下「輸出カルテル」という。)の締結が進められており、これに関連してわが国事業者と外国事業者との間の話し合いについてのわが国独禁法の解釈が世上種々論議されているが、この問題に関する当委員会の解釈は次のとおりである。

    1. わが国の輸出カルテルは、わが国事業者を当事者とし、わが国事業者が法律の手続に従い、輸出市場の状況に応じて主体的にカルテルを締結し、又はその内容を変更し、あるいはカルテルを破棄することができるものであり、この限りにおいて独禁法第3条後段(不当な取引制限の禁止)および同法第8条第1項1号(事業者団体による競争の実質的制限の禁止)の適用を除外されるものである。
    2. これに対し、わが国事業者と外国事業者との間で、わが国事業者が外国事業者の同意のもとに輸出カルテルを締結し、それを実施する旨の国際協定を締結することは、カルテルの当事者に外国事業者が加わる点において輸出カルテルと異なり、また、輸出カルテルの締結およびその遂行または輸出カルテルからの脱退にあたってわが国事業者が拘束を受けることとなる。このような協定は、独禁法第6条にいう「国際的協定又は国際的契約」に該当し、また、わが国事業者間またはわが国事業者と外国事業者との間に不当な取引制限をもたらすものであるから、同条第1項により禁止されている不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定に該当する。

    1. したがって、わが国事業者と外国事業者との間でわが国からの輸出数量、価格等について話し合いを行ない、合意(国際的協定)を成立させることは違法である。このことは国際的協定の成立時点と輸出カルテル締結時点との前後関係を問わない。すなわち、
      1. 輸出カルテルを締結した後に、同じ制限内容の国際的協定を締結する場合
      2. 国際的協定を締結し、同じ内容の輸出カルテルの締結をまってこれを発効させる場合
      3. 国際的協定の締結、発効後に同じ制限内容の輸出カルテルを締結する場合のいずれにおいても違法である。
    2. これに対し、わが国事業者が輸出カルテルを締結するための準備行為として、外国事業者と外国市場の状況や見通し、またはわが国からの輸出数量、価格等のあり方に関して情報交換することは、外国事業者とわが国事業者との間に合意(黙示の合意を含む)が成立する場合を除いては違法とはならない。
      なお、このような合意の成立の有無は、情報交換の内容、態様、結果の発生等により決まるものであり、個別ケース毎に事実認定される。

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