7 役務の成果物に係る権利等の一方的取扱い
  • 7 役務の成果物に係る権利等の一方的取扱い
    (1) 考え方
     役務の成果物が取引の対象となる役務の委託取引にあっては、受託者が制作した成果物について、著作権が生じたり、特許権、意匠権等の権利の対象となることがある。また、受託者が当該成果物を制作する過程で、他に転用可能な成果物、技術等を取得することがあり、これが取引の対象となる成果物とは別の財産的価値を有する場合がある。
     このような役務の委託取引において、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、当該成果物が自己との委託取引の過程で得られたこと又は委託者の費用負担により制作されたことを理由として、一方的にこれらの権利を自己に帰属させたり、当該成果物、技術等を役務の委託取引の趣旨に反しない範囲で他の目的のために利用すること(二次利用)を制限する場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注14)。
     しかし、このような場合に、成果物等に係る権利の帰属又は二次利用に対する対価を別途支払ったり、当該対価を含む形で対価に係る交渉を行っていると認められるときは、優越的地位の濫用の問題とはならない。
  • (注14)
     受託者が役務の成果物を作成するに当たっては、役務の委託取引に基づき受託者が自己の有する技術、人員等により作成する場合だけでなく、委託者から提供された技術、人員等をも使用して作成する場合がある。
     委託者が役務の委託取引を行うに当たり、受託者に自己の有する技術を提供した場合は、役務の委託取引と技術取引とが同時に行われたものとみることができる。このため、役務の成果物に係る権利の取扱いについても委託者が提供した技術との関係を考慮して判断されることとなるが、当該技術が特許又はノウハウである場合の独占禁止法上の考え方については、「特許・ノウハウライセンス契約における不公正な取引方法の規制に関する運用基準」(平成元年2月15日公正取引委員会事務局)のとおりである。
     また、委託者が技術、人員等を提供するなどにより、役務の成果物を受託者と共同で作成したとみることができる場合においては、当該成果物に係る権利の帰属又は二次利用及び当該成果物を作成するに当たっての労務、費用等の負担に係る取決め内容について、委託者と受託者の間で著しく均衡を失し、これによって受託者が不当に不利益を受けることとなるときには、優越的地位の濫用又は共同行為における差別的取扱い(一般指定第5項)として問題となる。

    (2) 独占禁止法上問題となる場合
     役務の成果物が取引対象となる役務の委託取引において、取引上優越した地位にある委託者が、当該成果物を制作した受託者に対し、次のような行為を行う場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
     @ 当該成果物が委託者との委託取引の過程で得られたこと又は委託者の費用負担により制作されたことを理由として、一方的に当該成果物に係る著作権、特許権等の権利を委託者に帰属させる場合
     A 当該成果物が委託者との委託取引の過程で得られたこと又は委託者の費用負担により制作されたことを理由として、受託者に対し、一方的に当該成果物の二次利用を制限する場合
     B 他に転用可能な成果物等が委託者との委託取引の過程で得られたこと又は委託者の費用負担により制作されたことを理由として、一方的に当該成果物等に係る著作権、特許権等の権利を委託者に帰属させたり、受託者に対し、その二次利用を制限する場合

    役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針
    経済法関連法令・ガイドライン
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