4 やり直しの要請
  • 4 やり直しの要請
    (1) 考え方
     委託者が、受託者に対し、提供を受けた役務について、それに要する費用を負担することなくやり直しを要請することがある。
     提供を受けた役務の内容が委託時点で取り決めた条件に満たない場合には、委託者がやり直しを要請することは問題とならないが、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、その一方的な都合でやり直しを要請する場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注11)。
     なお、やり直しのために通常必要とされる費用を委託者が負担するなど、受託者に不利益を与えないと認められる場合には、優越的地位の濫用の問題とはならない。
  • (注11)
     役務の成果物が取引対象となる取引にあっては、受託者が成果物を試作した後でなければ具体的な仕様等が確定できないため、委託者が当該試作品につきやり直しを要請する場合がある。このような場合に、当該やり直しに係る費用が当初の対価に含まれていると認められるときは、優越的地位の濫用として問題とはならない。

    (2) 独占禁止法上問題となる場合
     取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、提供を受けた役務のやり直しをさせることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
     @ 委託者側の一方的な都合により取引の対象となる役務の仕様等を変更したにもかかわらず、仕様に合致していないとして、受託者にやり直しをさせる場合
     A 役務の提供を受ける過程で、その内容について了承したにもかかわらず、提供を受けた後に受託者にやり直しをさせる場合
     B 提供を受けた役務について、あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくし、委託内容と異なることや瑕疵があることなどを理由として、受託者にやり直しをさせる場合
     C 受託者が委託者に対し仕様ないし検査基準の明確化を求めたにもかかわらず、これを明確にしないまま、仕様等と異なることや瑕疵があることなどを理由として、受託者にやり直しをさせる場合

    役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針
    経済法関連法令・ガイドライン
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