3 著しく低い対価での取引の要請
  • 3 著しく低い対価での取引の要請
    (1) 考え方
     委託者が、受託者に対し、当該役務の内容と同種又は類似の内容の役務の提供に対し通常支払われる対価に比して著しく低い対価での取引を要請することがある。
     取引の対象となる役務の対価について、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、著しく低い対価での取引を要請する場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注9)。
     しかし、委託者が要請する対価が受託者の見積りにおける対価に比べて著しく低く、受託者からみると、委託者による代金の買いたたき行為であると認識されるとしても、委託者から要請のあった対価で受託しようとする同業者が他に存在する場合など、それが対価に係る交渉の一環として行われるものであって、その額が需給関係を反映したものであると認められる場合には、優越的地位の濫用の問題とはならない(注10)。
     なお、著しく低い対価での役務の委託取引を要請することが優越的地位の濫用行為に該当するか否かについては、対価の決定に当たり受託者と十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法、他の受託者の対価と比べて差別的であるかどうか等の決定内容、取引の対象となる役務の需給関係を反映しているかどうか等の対価の決定状況などを勘案して総合的に判断することとなる。
  • (注9)
    このような場合、委託者と受託者の間で対価に係る交渉が十分に行われないときには、受託者は委託者による代金の買いたたき行為と認識しがちであるので、取引上優越した地位にある委託者は、当該対価が需給関係を反映したものであることについて十分受託者に説明した上で当該要請を行うことが望ましい。
  • (注10)
    同業者が一般指定第6項に規定する不当廉売に該当する行為を行っている場合には、当該同業者の提示する対価は需給関係を反映したものであるとは認められない。

  • (2) 独占禁止法上問題となる場合
     取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、役務の委託取引において著しく低い対価を定めることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
     @ 受託者が役務の委託取引を行うに際して新たに設備投資や人員の手配を行う必要があるなど、これによって当該役務の提供に必要な費用等も大幅に増加するため、受託者が対価の引上げを求めたにもかかわらず、かかる費用増を十分考慮することなく、著しく低い対価を定める場合
     A 受託者に対して短い納期の設定を行い、これによって当該役務の提供に必要な費用等も大幅に増加するため、受託者が対価の引上げを求めたにもかかわらず、かかる費用増を十分考慮することなく、著しく低い対価を定める場合
     B 多量ないし長期間の役務の委託取引をすることを前提として受託者に見積りをさせ、その見積りにおける対価を少量ないし短期間しか取引しない場合の対価として定めるとき
     C 特定の受託者に対し、合理的な理由がないにもかかわらず、他の受託者の対価と比べて差別的に低い対価を定める場合

    役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針
    経済法関連法令・ガイドライン
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