2 代金の減額要請
  • 2 代金の減額要請
    (1) 考え方
     委託者が、受託者に対し、契約で定めた代金の減額を要請することがある。
     受託者が提供した役務の内容が委託時点で取り決めた条件に満たないことを理由として委託者が代金の減額を要請することもあるが、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、正当な理由がないのに、代金の減額を要請する場合には、あらかじめ計算できない不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注8)。
     また、委託者が契約で定めた代金を変更することなく、役務の仕様を変更したり、契約外の役務の提供を要請する場合もあるが、このように代金を実質的に減額することとなる場合の考え方は、上記と同様である。
     なお、代金の減額要請が対価に係る交渉の一環として行われ、その額が需給関係を反映したものであると認められる場合には、優越的地位の濫用の問題とはならない。
  • (注8)
     受託者との間の継続的な取引関係の中で、代金の減額に代えて「協賛金」、「協力金」等の名目で金銭的な負担の要請が行われる場合があるが、その場合の考え方は、この代金の減額要請の場合と同様である。
     また、委託者が行う催事等の費用の一部に充当するために受託者に対して協賛金等の負担の要請が行われる場合があるが、その場合の考え方は、後記5のとおりである。
    (2) 独占禁止法上問題となる場合
     取引上優越した地位にある委託者が代金の減額を行うことは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
     @ 受託者に責任がないにもかかわらず、役務の提供を受けた後に、予算不足など委託者側の一方的な都合により、契約で定めた代金の減額を行う場合
     A 提供を受けた役務について、あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくし、委託内容と異なることや瑕疵があることなどを理由として、契約で定めた代金の減額を行う場合
     B 委託者側の一方的な都合により取引の対象となる役務の仕様等の変更、やり直し又は追加的な役務の提供を要請した結果、受託者側の作業量が大幅に増加することとなるため、受託者に対し当該作業量増加分に係る代金の支払を認めたにもかかわらず、当初の契約で定めた代金しか支払わない場合
     C 受託者が委託者の要請に基づいて設備投資や人員の手配を行うなど、委託者に対する役務提供の準備のための費用を負担せざるを得なくなっているにもかかわらず、委託者側の一方的な都合により、当該役務の一部の委託を取りやめ、契約で定めた代金から委託取引の減少分に係る代金の減額を行う場合

    役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針
    経済法関連法令・ガイドライン
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