1 代金の支払遅延

  • 1 代金の支払遅延
    (1) 考え方
     委託者が、提供を受けた役務の代金について、受託者に責任がないにもかかわらず、その全部又は一部を契約で定めた支払期日より遅れて支払うことがある。
     このような代金の支払遅延は、委託者側の収支の悪化や社内手続の遅延などを理由とすることが多いが、取引上優越した地位にある委託者が、正当な理由がないのに、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる。
     また、契約で定めた支払期日より遅れて代金を支払う場合だけでなく、取引上優越した地位にある委託者が、一方的に代金の支払期日を正常な商慣習に照らして遅く設定する場合や、支払期日の到来を恣意的に遅らせる場合にも、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい。ただし、支払期日が遅く設定される場合であっても、代金の額について支払期日までの受託者側の資金調達コストを踏まえた対価として交渉が行われるなど不当に不利益を受託者に与えていないと認められるときは、優越的地位の濫用の問題とはならない。

    (2) 独占禁止法上問題となる場合
     取引上優越した地位にある委託者が代金の支払を遅らせることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
     @ 社内の支払手続の遅延などを理由として、委託者側の一方的な都合により、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合
     A 役務の成果物を対象とする取引において、役務の成果物の提供が終わっているにもかかわらず、当該成果物の検収を恣意的に遅らせることなどにより、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合
     B 役務の成果物を対象とする取引において、代金は当該成果物を委託者が実際に使用した後に支払うこととされている場合に、委託者側の一方的な都合により当該成果物の使用時期を当初の予定より大幅に遅らせ、これを理由として代金の支払を遅らせるとき

    役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針
    経済法関連法令・ガイドライン
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