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     我が国における事業者間の役務の委託取引においては、特定の事業者間で継続的な取引が行われる場合がある。多くの委託者が継続的な取引を行っている場合には、一般に、受託者が取引先を変更することが困難となりがちであるほか、役務の提供に当たっては、個々の委託者ごとに異なったノウハウや設備を必要とする場合もあって、受託者は既存の取引関係をできるだけ維持しようと努めることとなりがちである(注4)。
     このように役務の委託取引において継続的な取引が行われ、受託者側が取引先を変更することが困難であって、委託者が取引上優越した地位にある場合に、当該委託者が、受託者に対し、役務の委託取引の条件又は実施について、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えるような行為を行うことは、受託者の自由かつ自主的な判断による取引を阻害し、また正当な条件で受託しようとする者や当該委託者の競争者を競争上不利にさせるおそれがあるものである。
     このような行為は、優越的地位の濫用として不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定第14項)(注5)。
     なお、独占禁止法による優越的地位の濫用規制は、このような行為によって役務の委託取引における委託者間あるいは受託者間等における公正な競争が阻害されるおそれがある場合に当該行為を排除しようとするものである。
  • (注4)
    事業者間取引の継続性に関する独占禁止法上の考え方は、流通・取引慣行ガイドライン第1部の1(生産財等に係る継続的取引についての考え方)記載のとおりであり、役務の委託取引にあっても同様である。
     なお、優越的地位の濫用行為は、継続的な取引関係を背景として行われることが多いが、継続的な取引関係にない事業者間で行われることもある。
  • (注5)
     この指針において「不公正な取引方法」という場合には、特に記載のない限り、「不公正な取引方法」(昭和57年公正取引委員会告示第15号)(一般指定)の第14項(優越的地位の濫用)をいう。

    役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針
    経済法関連法令・ガイドライン
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