独占禁止法第11条の規定による金融会社の株式保有の認可についての考え方
金融業(銀行業、信託業、保険業、無尽業及ぴ証券業をいう。以下同じ。)を営む会社(以下「金融会社」という。)による国内の会社の株式の保有(取得又は所有をいう。以下同じ。)については、金融会社による事業支配力の過度の集中を未然に防止し、公正かつ自由な競争を促進する観点から、独占禁止法(以下「法」という。)第11条により、その発行済株式総数の5%(保険業を営む会社の場合は10%。以下同じ。)を超えて保有することが禁止されている(同条第1項)。
他方、金融会社は、事業の性格上又は債権保全の一環として、このような制限を超えて株式を保有する必要があり、かつ、事業支配力の過度の集中をもたらすおそれのないような場合も考えられることから、法第11条第1項第1号から第3号に規定されている特定の場合及び同項ただし書の規定によりあらかじめ公正取引委員会の認可を受けた場合は、例外的に5%を超えて株式を保有できることとされている。
また、法第11条第1項第1号又は第2号に該当する株式保有については、1年を超えて保有しようとするときは、同条第2項の規定によりあらかじめ公正取引委員会の認可を受けなければならない。
法第11条第1項及ぴ第2項の規定による公正取引委員会の認可についての考え方は以下のとおりである。
なお、「金融会社の株式保有の認可に関する事務処理基準」(平成6年6月20日公正取引委員会事務局)は、廃止する。
- 第1 法第11条第1項ただし書の規定による認可
- 認可を申請する金融会社(以下「申請会社」という。)により発行済株式総数の5%超の株式を保有される会社(以下「株式発行会社」という。)が、次の(1)又は(2)に該当する場合には、法第11条第1項ただし書の規定により認可を行うこととする。
- (1)従属業務子会社株式発行会社が次のアからキまでの要件をすべて満たす場合
- ア 株式発行会社の事業内容が、申請会社の固有の業務に従属するもの(注1)であること。
- イ 株式発行会社の営業活動の範囲が申請会社、当該会社の子会社(注2)又はこれらの役員・従業員(以下「申請会社等」という。)を対象としたものであること。
- ウ 株式発行会社が当該業務を行うことに合理的な理由が存在すること。
- 工 原則として、株式発行会社が新規に設立されるものであること。
- オ 原則として、株式発行会社の発行済株式のすべてが申請会社により保有されること。
- カ 株式発行会社の申請会社等に対する収入依存度(株式発行会社が申請会社等のために業務を行うことによって得られる営業収入を当該業務に係る営業収入の総額で除した比率をいう。以下同じ。)が、原則として50%以上であること(注3)。
- キ 株式発行会社が、事前に公正取引委員会の承認を受けた場合を除き、国内の他の会社の株式を保有しないこと。
- (注1)申請会社の固有の業務に従属する業務としては、例えば、申請会社からの委託に基づいて行う次のような業務がある。
- 不動産の取得、所有、賃貸、保守及ぴ管理業務
- 計算業務
- 現金自動預入・支払機等の保守及び運行管理業務
- (注2)法第9条第3項又は第4項に規定する子会社をいう。以下同じ。
- (注3)次の業務については、申請会社等からの収入依存度を問わないものとする。
- 貸出金等の回収のために担保権を実行する必要がある場合に行う担保不動産の競落業務(競落後の当該不動産の保守・管理業務を含む。以下同じ。)及び金融機関が共同で設立した不動産担保付債権の買取会社が当該金融機関から買い取った不動産担保付債権の回収のために担保権を実行する必要がある場合に行う担保不動産の競落業務
- 申請会社等である銀行の取引先から回収した現金等を整理して取引先の申告どおりであるかどうかを精査し確認する業務及び当該銀行の取引先から請求された両替金・新札等を精査した上で取引先の店舗別に整理する業務
- (2)金融会社等
株式発行会社が次のアからウまでのいずれかに該当する会社である場合
- ア 金融会社
- イ 金融会社固有の業務に準ずる業務(注4)を営む会社
- ウ その子会社がア又はイのみである持株会社(注5)
- ただし、「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の考え方」(平成9年12月8日公正取引委員会)における「事業支配力が過度に集中すること」の考え方に照らして、申請会社、株式発行会社及び申請会社が株式の所有により事業活動を支配している国内の会社の事業支配力が過度に集中することとならない場合及ぴ申請会社又は株式発行会社の株式保有により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとならない場合に限る。
- (注4)金融会社固有の業務に準ずる業務とは、次のいずれかの業務をいう。
- 申請会社又はその子会社(金融会社に限る。)が現に営むことができる業務
- 具体例
- :債務保証業務(申請会社又はその子会社が銀行又は保険会社である場合)
- :証券投資信託受益証券の収益金等支払代理業務(申請会社又はその子会社が証券会社である場合)
- :金地金売買等業務(申請会社又はその子会社が銀行又は証券会社である場合)
- 申請会社又はその子会社(金融会社に限る。)が現に営むことができる業務から当然に派生し、又は当該業務と経営資源の共用化を図ることができる業務
- 具体例
- :顧客との資金決済等に係るVAN業務
- :総合研究所業務(産業・金融経済分析、経営相談等)
- :ベンチャー・キャピタル業務
- :金融商品販売・募集代行業務
- 取引形態が金融取引に類似している業務
- 具体例
- :投資顧問業務
- :投資信託委託業務
- :リース業務
- (注5)法第9条第3項に規定する持株会社をいう。
- 上記1(1)又は(2)に該当しない申請については、次の点を考慮して、個別に認可の可否を検討することとする。
(1)申請会社による株式保有の必要性
(2)当該株式保有による印請会社の事業支配力増大のおそれの有無双びその程度
(3)株式発行会社の属する市場における競争への影響
- 第2 法第11条第2項の規定による認可
- 法第11条第2項の規定による認可は、同条第1項の適用除外株式のうち、同項第1号又は第2号に該当する株式保有であって、申請会社が当該株式につき1年を超えて保有しようとする場合になされるものであり、具体的には次の株式保有が対象となる。
- (1)担保権の行使による株式保有(第1号)
- (2)代物弁済の受領による株式保有(第1号)
- (3)証券会社による業務上の株式保有(第2号)
- 申請会社により上記1の株式保有に係る申請がなされた場合には、次の点を考慮して、個別に認可の可否を検討することとする。
- (1)当該株式の処分が困難であることの理由
- (2)当該株式保有による申請会社の事業支配力増大のおそれの有無双びその程度
- (3)株式発行会社の属する市場における競争への影響
- なお、法第11条第2項の規定による認可については、「速やかに処分することを条件としなければならない」(同項後段)とされていることから、原則として1年以内の期限を付して認可を行うこととする。
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