事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の考え方
- はじめに
独占禁止法(以下「法」という、)第9条の改正(平成9年12月17日から施行。)により、事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の設立・転化が禁止されることとなる。禁止の要件は法第9条第5項の規定に定められているが、公正取引委員会として本条の規定の運用に当たり、あらかじめその解釈を示すことにより、どのような持株会社が禁止されるかについての事業者の予測可能性を高め、運用の透明性を図ることが重要であると考え、今般、「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の考え方」を作成、公表することとした。
なお、ベンチャー・キャピタルに対する独占禁止法第9条の規定の運用についての考え方」(平成6年8月23日 公正取引委員会)は、廃止する。
- 1 規制対象
- 持株会社の定義
- ア 「持株会社」とは、会社の総資産の額に対する当該会社が所有する子会社の株式(社員の持分を含む。以下同じ。)の取得価額(最終の貸借対照表において別に付した価額があるときは、その価額。)の合計額の割合が50%を超える会社をいう(法第9条第3項)。
- イ 子会社とは、会社がその発行済の株式の総数の50%を超える株式を所有する(子会社が所有する分を含む。)国内の会社をいう(法第9条第3項及び第4項)。
- 持株会社グループのとらえ方
- ア 事業支配力が過度に集中することとなる持株会社に該当するか否かの判断に当たっては、「持株会社及び子会社その他持株会社が株式の所有により事業活動を支配している国内の会社」(法第9条第5項)、すなわち、「持株会社+子会社(50%超所有されている国内の会社)十実質子会社」を持株会社グループとしてとらえ、これについて事業支配力が過度に集中することとなるか否かを判断する。
- イ 「株式の所有により事業活動を支配している国内の会社」とは、持株会社の株式所有比率(子会社が所有する分を含む。以下同じ。)が25%超50%以下であり,かつ、持株会社の株式所有比率が最も高い(他に同率の株主がいる場合を除く。)国内の会社をいう。
- 禁止される場合
- ア 事業支配力が過度に集中することとなる持株会社を設立する場合
- イ 会社が、事業支配力が過度に集中することとなる持株会社に転化する場合
- ウ 設立された時点又は会社から持株会社に転化した時点では、事業支配力が過度に集中することとならない持株会社であったものが、事業支配力が過度に集中することとなる持株会社になる場合
- 2 「事業支配力が過度に集中すること」の考え方
- 「事業支配力が過度に集中すること」とは、法第9条第5項の規定で定義されているとおり、持株会社グループの(1)総合的事業規模が相当数の事業分野にわたって著しく大きいこと、(2)資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいこと、又は(3)相互に関連性のある相当数の事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていることにより、国民経済に大きな影響を及ぼし、公正かつ自由な競争の促進の妨げとなることをいう。
この定義の考え方は、
- ア 持株会社グループの形態が、
- (ア)総合的事業規模が相当数の事業分野にわたって著しく大きいこと
- (イ)資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいこと
- (ウ)相互に関連性のある相当数の事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていること
という要件のいずれかに該当し、
- イ 国民経済に大きな影響を及ぼし、
- ウ 公正かつ自由な競争の促進の妨げとなるという要件をすべて満たす場合、当該持株会社は、事業支配力が過度に集中することとなる持株会社に該当すると定義するものである。
これらの要件を満たし、事業支配力が過度に集中することとなる持株会社として禁止される類型は、次の2.第1類型から4.第3類型までのいずれかに該当するものであると解釈することができる。ただし、5.「事業支配力が過度に集中することとならない持株会社」の例に挙げられている場合は、この限りでない。
- 第1類型
持株会社グループの規模が大きく(a)、かつ、相当数(b)の主要な事業分野(c)のそれぞれにおいて別々の大規模な会社(d)を有する場合
- (a)持株会社グループの規模が大きいこと:総資産の額の合計額が15兆円を超えるもの総資産の額の合計額は、持株会社グループの総資産を連結して(グループ会社相互間の投資勘定と資本勘定及び債権と債務を相殺消去することをいう。以下同じ。)合計することによって評価する(なお、持株会社グループ内の金融会社の総資産の額は計算から除く。)。
- (b)相当数:5以上
- (c)主要な事業分野:日本標準産業分類3桁分類のうち、売上高6000億円超の業種ただし、2桁分類で同一の業種に属し、参入規制が行われる範囲や事業活動の実態を考慮すると同一の事業内容であると考えられる場合は、同一の事業分野と評価する(別表1参照)。
- (d)大規膜な会社:単体総資産の額3000億円超の会社
なお、当該会社の属する事業分野は、当該会社が営む主要な事業が属する事業分野とする。
- 第2類型
大規模金融会社(a)と、金融又は金融と密接に関連する業務を営む会社(b)以外の大規模な会社(c)を有する場合
- (a)大規模金融会社:単体総資産の額15兆円超である金融会社
- (b)金融又は金融と密接に関連する業務を営む会社:
- 金融会社固有の業務を営む会社
- 金融会社固有の業務に従属する業務を営む別表2に掲げる会社
- 別表3に掲げる金融会社固有の業務に準ずる業務を営む会社
- 上記1.から3.までに掲げる会社のみを子会社とする持株会社
- (c)大規模な会社:単体総資産の額3000億円超の会社
- 第3類型
相互に関連性のある(a)相当数の主要な事業分野(c)それぞれにおいて別々の有力な会社(d)を有する場合
第3類型に該当するかどうかの判断に当たっては、次の各項目の考え方を基本として、個別具体的に事業分野の規模及ぴ数、事業分野間の関連性の程度、会社の有力性の程度等を総合勘案して判断する。
- (a)相互に関連性のある事業分野関連性については、個別の事業分野ごとに実際の取引依存度やユーザーの選択状況も参考にしつつ合理的に判断することとするが、例えば、次のような場合には関連性のあるものとして評価する。
- 取引関係
各財・サービスを供給する事業分野間で密接な取引関係のある場合(例:製品とその原材料又は製品とその生産設備機器などの関係にある場合 別表4参照)
- 補完・代替関係
ユーザーが両方の財・サービスを結合して消費し又は選択的に利用するなど、ユーザーからみて、各事業分野の提供する財・サービスが補完・代替開系にある場合(別表5参照)
- (b)相当数:5以上(規模が極めて大きい事業分野に属する有力な会社を有する場合は、会社の有力性の程度により3以上)
- (c)主要な事業分野:日本標準産業分類3桁分類のうち売上高6000億円超の業種
ただし、2桁分類で同一の業種に属し、参入規制が行われる範囲や事業活動の実態を考慮すると同一の事業内容であると考えられる場合は、同一の事業分野と評価する(別表1参照)。
- (d)有力な会社:当該事業分野における売上高のシェアが1O%以上又は当該事業分野における売上高において上位3位以内の会社をいう。
- 「事業支配力が過度に集中することとならない持株会社」の例
- ア 純粋分社化の場合
自社が現に営む事業部門を子会社化し、かつ、当該子会社の株式を100%取得することにより、持株会社に転化する場合(設立当初から100%所有を継続している場合に限る。)
- イ ベンチャー・キャピタルの場合
持株会社が法第9条の2第10号で規定する会社に対する出資を業務とするようなベンチャー・キャピタルである場合
- ウ 金融会社の相互参入の場合
金融会社が異業態の金融会社を新規に設立することによって相互参入する方式として持株会社を設立し又は持株会社に転化する場合
- エ 小規模の場合
持株会社と子会社の総資産を連結して合計した額が3000億円以下である場合
- 3 持株会社に対する独占禁止法の他の規定の適用
2の考え方により「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社」に該当しない持株会社についても、株式保有に係る法第10条の規定は適用され、個別市場における競争を実質的に制限することとなる等の株式保有は法第10条の規定により禁止される。また、持株会社が合併する場合には法第15条の規定が適用され、個別市場における競争を実質的に制限することとなる等の合併は禁止される。
- 4 事前相談について
具体的な持株会社の設立等の計画について、事業者から独占禁止法上の問題の有無について照会がある場合は、公正取引委員会は、本考え方に基づき回答することとする。
この持株会社の設立等に係る事前相談の内容及ぴ回答については、事業者の秘密に関する部分を除き、支障のない限り、その概要を公表するものとする。
経済法関連法令・ガイドライン
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